「できない理由ばかり探す人」が、会社で量産されるワケ:スピン経済の歩き方(5/6 ページ)
会社の組織で「できない理由」ばかり語る人がいる。なぜ、彼/彼女らはできない理由ばかり述べるのか。その背景にあるのは……。
組織に壊滅的なダメージをもたらす
が、こういう議論になるたび、「ファックスのほうがデジタルより危機管理向き」「すぐに通信環境を変えるのは現実的ではない」という声が上がって、先送りにされてきた。知恵を絞って新しい方法を考えて、関係者と折衝しながら普及させていくより、「無理っす」「できっこない」と否定したほうが遥かにラクなのは言うまでもない。特に公務員はどれだけ汗をかいても給料は同じなので、「余計な仕事はしない、言い出さない」は自分の身を守る鉄則だ。
そこに加えて、「インテリの多いムラ社会」で「できない理由ばかりを探す人」が量産されていく一つの理由が、「人間関係」ではないかと考えている。
役所などで働いた経験のある方はよく分かると思うが、閉鎖的な組織は「人間関係」を異様なほどに重視する。ムラの中で平穏無事に定年退職まで過ごすには、対立や競争を繰り返して周囲と摩擦をしていくよりも「和をもって尊しとなす」というスタイルでいくほうがいいからだ。
国民に会食を控えるように呼びかける中で、厚生労働省の職員が20人以上の大宴会を開いていたことが報じられたが、あれが典型で、人間関係を重視する霞ヶ関ムラでは、送別会など飲み会は「人間関係を深める業務」という扱いであり、民間企業のように「飲み会とかうざいんで、欠席しまーす」では済まされないのだ。
このように「人間関係を重視するインテリ」は組織に壊滅的なダメージをもたらす「できない理由ばかり探す人」になりがちである。
せっかくの頭の良さや問題処理能力を、処世術や権力者への忖度(そんたく)、ライバルの足を引っ張る権謀術にばかり活用しているうちに、いつの間にか科学的な分析や客観的な状況判断ができなくなってしまうからだ。
「言われてみれば、ウチの会社の役員連中はみんなそうだな」と妙に納得する人も多いはずだ。それもそのはずで、実はこの問題は日本の組織ではかなり古くから報告されている、「伝統的な病」なのだ。
非常に分かりやすいのが日本軍だ。現場の兵士の命を紙キレのように扱う無謀な作戦の数々で、世界の戦史に名を残したこの組織の幹部たちは、国粋主義で狂っていたわけでもなく、戦術家としての能力が低かったわけでもない。むしろ、当時としては最高峰の軍事教育を受けた、教養あふれるインテリたちだった。
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