「できない理由ばかり探す人」が、会社で量産されるワケ:スピン経済の歩き方(6/6 ページ)
会社の組織で「できない理由」ばかり語る人がいる。なぜ、彼/彼女らはできない理由ばかり述べるのか。その背景にあるのは……。
いまだに軍隊カルチャーを引きずる
では、なぜそんな人たちが、判断ミスを続発させたかというと、「人間関係」を重視し過ぎたからだ。
例えば、「無謀な作戦」の代名詞であるインパール作戦は当初から軍内部でも反対論が多く出ていた。しかし、杉山元参謀総長によって作戦中止は「できない」と判断される。その理由について、当時の作戦部長である眞田穰一郎(さなだ・じょういちろう)少将の手記にこのように書いている。
「杉山参謀総長が『寺内(総司令官)さんの最初の所望なので、なんとかしてやってくれ』と切に私に翻意を促された。結局、杉山総長の人情論に負けたのだ」(Nスペプラス 17年9月28日)
作戦中止が「できない」と判断されたのは、軍事的・戦術的な観点からそうせざるを得ない理由があったからではない。大本営という「ムラ社会」の中で生きていく人々が、人間関係を優先していく中で発令されたものなのだ。
ちなみに、杉山参謀長のあだ名は、「便所の扉」だった。「どちらでも、押した方向に動く日和見主義者だったからという。
杉山参謀長のような人は今も皆さんのまわりに山ほどいないか。当然だ。社会は76年ぽっちでそれほど変わらない。現代の法律や社会常識の多くが明治時代のそれを上書きしただけなように、令和のサラリーマンの価値観も、戦前の価値観を多少アップデートしただけなのだ。
日本の組織に「できない理由ばかりを探す人」が量産されていくのは、われわれが日本軍的な人材教育から変わっていないことの証なのかもしれない。
窪田順生氏のプロフィール:
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで300件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。
近著に愛国報道の問題点を検証した『「愛国」という名の亡国論 「日本人すごい」が日本をダメにする』(さくら舎)。このほか、本連載の人気記事をまとめた『バカ売れ法則大全』(共著/SBクリエイティブ)、『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。
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