最低賃金引き上げが企業にもたらす影響は?:全国平均で28円引き上げ(2/2 ページ)
東京商工リサーチは、全国の企業9278社を対象に「最低賃金引き上げに関するアンケート」を実施した。
正規雇用を削減する理由
「正規雇用を削減する」と回答した企業に理由を尋ねたところ「現状の業績では賃上げ分を吸収できない」が65.1%(187社)で最多となった。次いで「業界の先行きを見通しにくい」が48.7%(140社)、「賃上げ分を自社のサービス、商品に転嫁できない」が42.5%(122社)と続いた。生産性向上などにつなげる「業務のデジタル化、省力化を図っているため」は15.6%(45社)にとどまった。
正規従業員の削減を検討する企業の大半で、理由に業績不振や経営面での先行き不透明感をあげた。こうした業種は、飲食・宿泊業、食料品などの製造業、印刷、アパレル関連が目立った。「その他」と回答した企業では、新型コロナで「いまある全事業所を維持するのが困難」「減収であるため」など、厳しい業況を反映したコメントが寄せられた。
21年度の最低賃金は、全国加重平均で前年度比28円増の930円に引き上げられた。秋田県、青森県、島根県などこれまで最低賃金が700円台だった県を含め全都道府県で時給が800円以上となる。ただ、これでも最低賃金の地域格差は埋まらず、今回の引き上げ後も、最高の東京都(1041円)と最低の高知県、沖縄県(820円)とは221円の差が開いている。
東京商工リサーチは「アフター・コロナを見据え、雇用の確保に積極的な姿勢を示す企業がある一方、コロナ禍で業績低迷が長引く業種にとっては、今回の最低賃金の大幅引き上げは、今後大きな負荷になりかねない」と指摘する。
調査は、21年8月2〜11日にインターネットで実施。有効回答9278社を集計し、東京商工リサーチが分析した。資本金1億円以上を大企業、1億円未満(個人企業などを含む)を中小企業と定義している。
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