意外にも、2020年度のEC取引はマイナスか:拡大どころか(3/3 ページ)
コロナ禍で、「ECが大幅拡大」「巣ごもり需要が活性化」「ECで物流が疲弊」など、世はEC一色のような騒がれ方をしたものだが、ふたをあけてみると、拡大どころかマイナスとなっていた。
デジタル商品は14.9%の伸び
また、巣ごもり需要で、デジタル系は相当伸びただろうと推測したが、こちらも14.9%の伸びと、爆発的なというほどのことでもない。もっとも大きな「オンラインゲーム」系は1兆4957億円と大きいが、7.5%の伸びにとどまっている。「在宅になって1日中ゲームやったり、映画見たりしていた」という意見も大多数のように聞こえていたが、これも「なんとか効果」というものなのだろうか、これまでも大好きだった人が、1日1時間程度プレイ時間が伸びた感じとしか言いようのない数字だ。
確かに、有料動画配信は33.1%の伸び、電子出版は36.18%の伸びだが、そもそも3000〜4000億程度の市場しかないため、全体に与える影響はさほど大きくない。有料音楽配信は、783億円だ。
旅行やイベントをやめて、巣ごもり需要が増えたという人も多いが、実態は全然カバーできていない。
注目のCtoC市場
メルカリを筆頭に、完全にECチャネルの一つとして定着した感のある個人間EC(CtoC-EC)は、どの程度の伸びなのだろうか。
令和2年のCtoC-ECの市場規模は1兆9586億円(前年比12.5%増)と推計された。もちろんコロナ禍の影響はあるだろうが、昨今のSDGs的な、リサイクル、リユースの価値観が広がっていることもひとつの要因かもしれない。
ただし、個人的には、著作権や肖像権、商標権など、オリジナルの価値をゆがめてしまうような商取引も見受けられ、そのあたりの法整備を行わないと、健全な経済取引が失われてしまう可能性すらあると感じている。
EC化、IT化が叫ばれて久しいが、この調査結果を見る限り、日本のEC化の進展は、恐ろしく遅い。この点だけ考えれば、コロナがなかったら、全然伸びていなかっただろう。
国もデジタル化、DXを進めているらしいが、本質的な「賢い買い物体験」をどうしたら、ユーザーに与えることができるのか、まじめに考えないと、絵空事のDXを叫んでも、何も解決しないことだけは明らかだ。(猪口真)
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