なぜ、7割超の日本企業は「五輪・緊急事態」でもテレワークできなかったのか:元凶は「IT」ではない(1/5 ページ)
遅々として進まない日本企業のテレワーク。緊急事態宣言下の五輪期間中でも、その実施率は3割を下回った。なぜ、この期に及んで日本企業のテレワークは進まないのか。
四度目の緊急事態宣言が出され、繰り返し使われる「正念場」という言葉がむなしく響く状況の中、日本経済新聞は「テレワーク率、五輪・宣言下でも3割届かず」と題した記事を報じました。
政府が何度も在宅勤務を含む「テレワーク推進」を訴えかけても、その実施率は伸び悩んでいるようです。記事で紹介されているパーソル総合研究所のデータによると、実施率は27.5%。2020年4月の27.9%からやや減少し、ほぼ横ばいという状況です。
とはいえ、テレワークの実施率に限界があるのも事実です。例えば「エッセンシャルワーカー」と呼ばれる職種などでは、ロボットのようなテクノロジーが飛躍的に進化でもしない限り、テレワークは難しいでしょう。また、全ての働き手がテレワークを望んでいるわけでもありません。
しかし、厚生労働省の「テレワーク総合ポータルサイト」によると米国のテレワーク導入率は85%に及びます。加えて、米国のデータは15年時点のものですから、新型コロナウイルスのまん延により、さらにテレワーク率は高まっているとも考えられます(英国・ドイツ・フランスは10年時点のデータ)。
だからといって、日本も同じくらいテレワークできて当然、とまではいえませんが、3割に満たないテレワーク実施率は、決して日本における限界値ではないのだと思います。
そもそも、政府がテレワーク推進を訴えているにもかかわらず、なぜ導入が進まないのでしょうか。このまま横ばいが続くようでは、多くの働き手が「テレワークしやすくなると思っていたのに……」と、諦めの境地の中で通勤を続けることになります。
関連記事
- なぜ? なかなか増えない女性管理職 ファクトで読み解く「歪さ」と「根深さ」
朝日新聞記事で、「女性活躍」を報じるメディア側でも、女性管理職比率が低いことが明らかとなった。2020年までに30%という目標達成が、30年に後ろ倒しされる中、どうすれば女性活躍は進むのか。 - 官僚アンケートで発覚 未だに「残念すぎる」霞が関の働き方と、改革を阻むカベ
民間企業に投げかけられている「テレワーク7割」の掛け声だが、霞が関は実現できているのか? 官僚アンケートで明らかになったのは、残念すぎる内情だ。 - 「週休3日」「副業容認」は各社各様 “柔軟な働き方”を手放しで喜べないワケ
新型コロナを受けて大手企業でも「週休3日制」や「副業容認」が進む。これまでもいくつかの企業はこうした働き方を柔軟にする制度を導入してきたが、個々の会社によって運用方式は違う。それぞれの違いを見逃さないために抑えておくべき、「3つの変化」とは。 - テレワークで剥がれた“化けの皮” 日本企業は過大な「ツケ」を払うときが来た
テレワークで表面化した、マネジメント、紙とハンコ、コミュニケーションなどに関するさまざまな課題。しかしそれは、果たしてテレワークだけが悪いのか? 筆者は日本企業がなおざりにしてきた「ツケ」が顕在化しただけだと喝破する。 - それ、本当にブラック企業? 日本社会に誤って広がる「ホワイト企業信仰」が迎える末路
「ブラック企業」というワードの一般化に伴い、あれもこれもブラックだと指弾されることも。筆者は、そんな風潮に警鐘を鳴らす。そもそも「いい会社」って何だろう。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.