吉野家とすき家の「牛丼並盛」に、37円の差がある意味 コロナ禍で明暗を分けた戦略を読み解く:飲食店を科学する(3/4 ページ)
コロナ禍でも牛丼チェーン大手のすき家が善戦している。一方、吉野家はすき家と比べて苦戦している。メニューの価格から戦略を読み解くと……
すき家と吉野家のメニュー分析
両ブランドの全メニュー(季節・店舗限定メニューを除く)を分析していきます。
すき家と吉野家のメニューカテゴリー数を集計しました。両ブランドで大きく異なる点は、牛丼のバリエーションの数です。すき家には13アイテムの牛丼メニューがあり、吉野家の牛丼メニューは5つです。基本的な牛丼のラインアップは両ブランドともあまり変わりませんが、すき家では「とろ〜り3種のチーズ牛丼」「鮭オクラ牛丼」「エビチリ牛丼」「ビビンバ牛丼」といったように、牛丼から派生したバリエーションメニューが豊富です。そのため、牛丼カテゴリーのメニュー数が多くなっています。
さらに、すき家には吉野家にはない「海鮮丼」が5アイテム、「中華丼」が3アイテムあります。デザートメニューに関しても「なめらかカラメルぷりん」「とろけるダブルショコラ」など、吉野家には無いメニューラインアップが多数あります。
全体のメニュー数も吉野家が77品に対して、すき家が91品とすき家の方が14品程多くなっています。このように、メニューラインアップの幅を広げ、周辺の牛丼以外の競合飲食店の需要も含めて取り込んでいく戦略を「包み込み戦略」といいます。
こうしたお話をすると「どのお店も包み込み戦略をすれば良いのでは?」と思われる方もいるかもしれません。しかし、包み込み戦略を行うためには、メニューアイテム数増加に伴う「厨房設備の増加」「オペレーションの複雑化」「食材ロスの増加」といった課題への対応が必須となります。企業にとっては、長年にわたるノウハウの蓄積が必要となるため、一朝一夕にはできないという側面もあります。
関連記事
- レゴランドってそんなにひどいの? 家族を連れて行ってみた
「隣接する商業施設からテナントが撤退」「水筒の持ち込み禁止」などのニュースで注目を浴びているレゴランド。ネット上では酷評する声もあるが、実際はどうなのだろうか。記者が家族を連れて遊びに行ってみた。 - スシローとくら寿司 「価格帯」と「シャリ」から見えた戦略の“決定的”な違いとは
大手回転寿司チェーンのスシローとくら寿司。標準的な寿司の重さはほぼ一緒。しかし、価格とシャリの違いから戦略の違いが見えてきた。 - 「生ビール190円」の原価率は85%? お客が3杯飲んでもしっかり利益が出る仕組みとは
「生ビール1杯190円」という看板を見かける。安さでお客を引き寄せる戦略だが、実は隠されたメリットもある。どんな狙いがあるのか。 - 松屋の魅力は券売機!? 人手不足時代に吉野家とすき家が導入しない理由とは
大手牛丼チェーン3社のうち券売機を導入しているのは松屋だけだ。生産性向上の切り札である券売機を吉野家とすき家は導入していない。各社に見解を聞いてみた。 - すき家の新型レジに「非常に残念」と客が苦言? 何がダメだと考えているのか
すき家の「セミセルフレジ」を利用したと思われるお客の投稿が話題に。お金の受け渡し行為がないことを残念がっている。すき家で導入が進むセミセルフレジとは?
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.