いかに病のある人をインクルージョンする組織にするのか カルビーの組織開発:社員の病と人事(3/4 ページ)
いかに病をインクルージョンする組織をつくっていくのか、病のある社員を支援できる組織をいかにつくるかというテーマに取り組みたい。
本人不在でその人への配慮について何も決めない
それぞれの部署で、上司や同僚など周囲の協力を得るためにも工夫を凝らす。「よく私は、さまざまな人事や組織の変革においては、“制度”“運用”“配慮”の3つの段階があると話しています。制度設計の際には2つ目の運用が生きるように、人事制度に余白を残すことが重要です」(武田氏)
人事制度を人事がつくり、それを守ってほしいと現場に伝え、現場で運用が始まる。「運用の段階では、その地域・部署だけの“いいローカライズ”ができるように、制度をガチガチに決めすぎてしまわないこと。すると、例えば病の社員が出たとき、その人の病状や部署の状況に合わせて配慮や協力がしやすくなります」(武田氏)
ただし、「ローカライズで重要なことは、あくまで“ローカル”であること」と、武田氏は強調する。「拡大解釈が独り歩きしないように、そのマネジャーが顔の見える範囲で、その人・その部署に本当に合う運用がされているかどうかを確認できることが条件です」(武田氏)
また、有効な支援にあたって、邪魔をするのが意識・無意識のバイアスだ。「“うちの奥さんも同じ病気だったけどこうだった”“そんな病気ならばフルタイムで働くのは無理”というようなバイアスを持っている人は少なくありません。自分が確信していることは実は思い込みであって、全員がそうではない、と気付くための研修を、特に管理職向けに行いました」(武田氏)
同時に、病のある社員にしろ、ほかの制約がある社員にしろ、「本人不在でその人への配慮について何も決めないこと」(武田氏)をルールにしているという。武田氏は前職の時代、がんを患った経験がある。
「私は比較的元気な患者でしたが、周囲の必要以上の配慮には正直さみしい気持ちがありました。自分が知らないところで自分の役割や仕事内容が決められることほど、悲しいことはありません。病状や病に向き合う気持ちは、驚くほど多様であることをまず理解しなければなりません。常に、“はじめまして”という気持ちで相手に向き合う。ダイバーシティ&インクルージョンの基本です」(武田氏)
そのために求められるのは、「本人との会話」(武田氏)だ。「例えば同じ病の人が同じ部署で出てきたときも、それぞれのケースでアンラーンして、支援の枠組みを組み直す必要があります。個別性を大切にしなければ、真に有効な支援はできないのです」(武田氏)
関連記事
- 崩壊寸前だったVoicy 離職率67%→9%に立て直した人事責任者が語る“人事の本質”
日本の音声コンテンツ市場の先頭を走る、音声メディア「Voicy」。3カ月で利用者数が2.5倍になるなど、コロナ禍で驚異的に成長している。しかし、たった1年半前は離職率が67%にのぼり、組織崩壊寸前だったという。そんな中でVoicyに入社し、抜本的な人事改革を行ったという勝村氏。一体どのような改革を行ったのか──? - 「営業は休めない」をどう解消? 積水ハウス、男性育休「100%・1カ月以上」実現のワケ
積水ハウスの男性育休取得率は100%、取得期間も1カ月以上と長い。しかし、始めからスムーズに制度が受け入れられたわけではない。従来は男性の育児休業の平均取得日数は2日程度で、「営業職は休めないだろう」という声も多かった。積水ハウスではどのように風土を変え、男性育休を定着させたのか。話を聞いた。 - NEC、りそな、パーソル──“息切れしない”企業改革、大手3社に共通する「ヒト投資」
働き方改革、リモートワーク、DX化、インクルージョン&ダイバーシティ――変化の速い事業環境の中で、企業が取り組むべき課題は山積状態。疲弊して歩みを止めることなく、会社の活力を生み出すためにはどうすればいいのか。少なくない企業が、「ヒト投資」という答えに活路を見い出している。大手3社に、その施策を聞いた。 - ジョブ型とメンバーシップ型を融合、ブリヂストンの人事制度は“日本型のスタンダード”になるか
ブリヂストンが中期事業計画の一環で、人事制度を改革している。その中で注目したいポイントが2つある。1つは、組織の階層構造のシンプル化。もう1つは、ジョブ型とメンバーシップ型を組み合わせた人事制度の導入だ。 - ダーツで席決め 好業績のカルビー、成長の源はオフィスにあった!
2009年に経営体制を大きく刷新したカルビー。それが功を奏し業績を伸ばし続けている。松本会長の号令の下、さまざまな経営改革に取り組んできた。その1つが本社移転をきっかけに推進したオフィス戦略だ。
© リクルートワークス研究所