日本柔道メダルラッシュに学ぶ、「努力・気合・根性」の日本企業が“オワコン”な理由:働き方の「今」を知る(1/5 ページ)
東京五輪でメダルラッシュとなった日本柔道。その裏には、過度な「努力・気合・根性」からの脱却があった。一方、日本企業はといえば……。
何かにつけて、「努力」「気合」「根性」に結び付けたがる人がいる。売上目標を達成できなかったチームに対して「気合が足りないんだ」とか、あるいは仕事に必要な資格試験に合格できなかった後輩に「努力不足だろう」、はたまた契約獲得できなかった部下に対して「根性なしが」などと叱責してしまう上司がまさに典型である。では逆に、気合や根性にあふれていて、努力すれば、全ての人が期待された成果を出せるのだろうか。
東京五輪が8月8日に閉幕した。日本選手団は歴代最多となる金27、銀14、銅17の計58個のメダルを獲得。しかも金メダル数においては米国、中国に続いて、世界3位という記録を打ち立てた。メダル獲得のいかんを問わず、出場し、結果を出した選手をたたえるばかりであるが、果たしてこれらも努力・気合・根性のたまものなのであろうか。
もちろん、素晴らしい結果は決して精神力だけによるものではないだろう。
今般の大躍進の背景にはまず、国からの強力な支援があった。国からの強化費は、2021年度で約103億円にものぼり、3年連続で100億円を超えている。この金額は、東京に五輪招致が決まる前である13年度(約33億円)の3倍以上にもなる。さらにスポーツ庁では2年前から、メダル獲得が有望な15競技を「東京重点支援競技」と位置付け、強化費を重点配分するなど、万全のサポート体制で臨んでいた結果が、今回のメダルラッシュなのである。
その中でも象徴的な競技は「柔道」だろう。今般の五輪では金メダル9個を記録したが、この誇るべき結果に至った要因は、従前の「質より量の練習」「実戦で代表をふるいにかける」「一本勝ちを狙う」といった伝統とこだわりを根本から見直し、世界の動きを見据えて改善を施し続けたからだといわれている。
12年のロンドン五輪において、日本柔道は史上初めて金メダルを獲得できなかった。惨敗という結果を受けて井上康生氏が監督に就任し、新たな指導方法を採り入れたのだ。
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