これがDXと呼べるか不明だが、出版業界は新たなフェーズに入ったようだ:前年比4.8%増(3/3 ページ)
2020年度の紙と電子、両方あわせた推定販売額が、1兆6168億円となんと前年比4.8%増となったようだ。
「読み聞かせ」が大幅に増えた? 絵本が好調
紙の出版で頑張っている領域が絵本だ。小さな子どもと共に過ごす時間が増え、読み聞かせの時間が増えたのと、以前からの読み聞かせの普及が本格化したのだろう。
読み聞かせには、電子よりも紙の書籍のほうが使い勝手がいい。紙書籍の存在意義はこういうところにあるのかもしれない。
ただ、この読み聞かせにも問題はある。「YouTube」など動画サイトへの違法「読み聞かせ動画」だ。出版社の許諾を受けたものとは思えないものが大半であり、出版社、著作者にとっては死活問題だ。
また、著名人による書籍紹介の動画も、著作権的にはぎりぎりだろう。出版側も宣伝になるということで黙認状態(むしろ歓迎か?)だが、人のコンテンツを使って、自分でユーチューバーとして稼いでいるわけだから、これは明らかに著作権を支払うべきビジネスモデルのはずだ。
出版は、アニメや映画、舞台をはじめ、さまざまなエンターテイメントのかたちへ発展する、源流をなすものと言っても過言ではなく、それだけに電子化や動画化への展開は、やり方によっては、大きな利益になることもあれば、逆のパターンもある、難しいかじ取りが必要なビジネスだ。
しかし、これだけコミック系しか売れないとなると、コンテンツの元になる「文字本」の行方はどうなるのか。実際にも、いまの書籍は、読解力の低下が根底にあるのかどうかはわからないが、売れる書籍は、これでもかというぐらい「やさしく」書かれているものばかりだ。
文字による深い読解があるからこその、「わかりやすく動画で解説」や「だれでもわかるマンが版」的なものが生まれると思うのだが、この考え自体がもはや「昭和」の遺物なのだろうか。
コミュニケーションツールとしての言語の変化は変えようがないのか。(猪口 真)
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