いまさら聞けないリチウムイオン電池とは? EVの行く手に待ち受ける試練(後編):池田直渡「週刊モータージャーナル」(1/7 ページ)
今回は、そのレアアース不足を前提にバッテリーがどの様な変化をしていくのかについて、考えてみたい。まずリチウムイオン電池というものはそもそもどういうモノなのかから説明をしないと話が分からないだろう。
さて、他のニュースを割り込ませている間にだいぶ間が空いてしまったが、この「EVの行く手に待ち受ける試練」では、前編で、世界中でバッテリー工場の新設が計画されていること、中編で、その計画は、実現が危ぶまれるほどの大胆な増産計画が求められていること、そしてレアメタルの供給にはいろいろと障害があり、特にコバルトについては、コンゴの政治的不安定という重大なポリティカルな問題があって、将来的にも安定調達がかなり難しいということを説明してきた。
今回は、そのレアアース不足を前提にバッテリーがどのような変化をしていくのかについて、考えてみたい。
リチウムイオン電池とは何か?
まずリチウムイオン電池とは、そもそもどういうモノなのかから説明をしないと話が分からないだろう。
中編で説明した通り、二次電池(再充電が可能な電池)では、正極と負極に特性の違う素材を使い、電極間に電解液という液体を満たすことでできている。リチウムイオン電池とは、この電極の間で電子のやり取りをする際に、リチウムイオンを介する方式をいう。極論をいえば電極にリチウムを使っているかどうかは問題ではない。例えばリチウムイオンは電解液に含まれていても構わないわけだ。
とはいうものの、現実に商用に使われているリチウムイオン電池は、正極にリチウムを使っていると考えて大筋では間違いではない。
さて、そのリチウムなのだが、純粋な金属としてのリチウムは、超が付く危険物質である。極めて不安定で空気中では窒素と化合するし、水と反応して発火する。身体に触れれば火傷をするし、化学反応によって有毒ガスも発生する。
危ない金属なので、そのままではとてもではないがピーキー過ぎて使えない。なのでこれを扱いやすくするため、正極に用いる際には他の金属と化合させて、安定化を図らざるを得ない。その際に用いられるのが、コバルト、ニッケル、マンガン、鉄などだ。
リチウム電池は、リチウムと組み合わせる相棒によって、コバルト系、ニッケル系、マンガン系、鉄系が存在するが、現在よく使われているものはコバルト、ニッケル、マンガンを適宜組み合わせた三元系と呼ばれるものだ。
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