知られざるVisaのタッチ決済王国、石川県珠洲市 普及のワケ(2/2 ページ)
Visaが普及に力を入れるタッチ決済。この2年間で対応カード枚数は5倍の5100万枚に、コンビニでの決済取引件数は36倍に増加した。そんな中、「Visaのタッチ決済の人口当たりの件数が日本で最も多い」というのが、北陸地方に位置する石川県珠洲市だ。
先行投資の原資となる決済手数料
一方で、イシュアである北國銀行が投資できる理由には、諸外国に比べて高いといわれる日本の決済手数料の高さも関係しているようだ。経済産業省が明らかにしたところによると、国内のクレジットカード決済手数料として加盟店が支払う料率は平均で3.24%。うち、イシュアが2.3%を得るとされている。
面白いのは、日本においてはクレジットカードであってもデビットカードであっても料率が変わらないといわれていることだ。ビザ・ワールドワイド・ジャパンのスティーブン・カーピン社長は、「この手数料はVisaが課すものではない。もっとVisaのアカウントを活発に使ってもらうためのインセンティブとして投資に使ってもらうものだ」と話した。
銀行口座から即時引き落としで支払うデビットカードは、口座に残高がなければ決済が完了しないため、クレジットカードとは違い、未払いのリスクは基本的に存在しない。にもかかわらず料率が同じなのはなぜか。
「Visaデビットは日本では日が浅い。リスクのみがコストになるわけではなく、日本ではVisaデビットについてはイシュアが行わなければいけない投資がある。まだまだお金がかかる。日本におけるデビットの料率は、日本の現在の状況を考えると適切だと考えている」(カーピン社長)
国内のキャッシュレス決済比率が諸外国に対して遅れている理由の1つとして、決済手数料の高さを挙げる声は多い。「Visaはエンドのコストを決める立場にない」とカーピン社長が言うとおり、歴史的に決済ネットワーク構築に関わってきた各社のスタンスもあって、高止まりしている状況だ。
一方で、この手数料については値下げの動きもある。PayPayが決済手数料率を1.6%に決めたこともあり、相対的にクレジットカードの手数料率の高さが目立つ。三井住友カードは自社の決済端末を使う中小店舗の決済手数料を2.7%に下げたと報じられている。表に開示されることが基本的にないクレジットカードの決済手数料だが、この秋に向けて綱引きが始まりそうだ。
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