全員退職、数億円の借金──どん底で生まれた“接客DX”アプリ「STAFF START」は何がすごいのか:EC売り上げ、700%UPの企業も(5/5 ページ)
スタッフのECやSNSなどへの投稿をきっかけに、どれだけ商品が購入されたかを可視化するサービス「STAFF START」。導入企業の中には、店舗スタッフたちの活躍でEC売り上げが700%アップした例や、一人で月間9000万円以上を売り上げたスタッフもいるという。アパレル業界の期待を背負うSTAFF STARTだが、開発までの道のりは決して平たんではなかった──。
LINEと手を組み、アパレル業界を守る
今秋、バニッシュ・スタンダードはLINEとの協業で「LINE STAFF START」を開始予定だ。LINE公式アカウントを通じてオンライン接客ができるサービスだが、小野里さんは「重要なのはそこではない」と言う。
「一番重要なのは、お客さまが来店してくださることです。以前からお客さまとLINEを交換してやりとりする店舗スタッフはいましたが、プライベートアカウントがほとんどで、やりにくい面がありました。LINE公式アカウントを使うことでそれが解消できます。また近い将来、オンライン接客を受けたお客さまが店舗へ来店されたことを検知できるようにしていきたいと思っています。僕はそれが、アパレル業界を守ることにつながると考えています。なぜなら、どれだけECが進化しても、ブランドを体現し、お客さまに高揚感を与えられるのは店舗だからです」
なぜLINEなのか。「LINEでないとできない」と小野里さんは断言する。
「国内8900万ユーザー(21年6月時点)を誇るLINE。店舗スタッフにとって最大のプラットフォームであるSTAFF START。その2つの組み合わせが重要なんです。加えて、来店検知にはアプリが必要です」
「僕はもう一度、店舗や商業施設に人が集まるようにしたいんです」、最後にそう小野里さんは語った。
借金はもうない。傍らにたくさんの仲間がいる。
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