高級ブランドの分岐点 EC時代、攻めるグッチと守りのシャネル:石角友愛とめぐる、米国リテール最前線(1/4 ページ)
コロナ禍で、ECの市場が急速に拡大している。EC化には最も遠いと思われていたハイブランドファッションも、「EC化をどう捉えるか」の分岐点に立たされている。グッチ、ルイ・ヴィトン、シャネルなど、各ブランドの戦略の違いとは?
連載:石角友愛とめぐる、米国リテール最前線
小売業界に、デジタル・トランスフォーメーションの波が訪れている。本連載では、シリコンバレー在住の石角友愛(パロアルトインサイトCEO・AIビジネスデザイナー)が、米国のリテール業界の最前線の紹介を通し、時代の変化を先読みする。
コロナ禍で顧客が店舗に足を運べなくなったことで、EC化は一気に加速しました。
米国では、パンデミック前に約10年かけて5.6%から16%へとおだやかに浸透していたEC化が、パンデミック中のたった8週間で27%まで一気に浸透したと言われています。
その中で、EC化には最も遠いと思われていたハイブランドファッションが、今、EC戦略において大きな分岐点に立たされています。特に、ブランドによって「EC化をどう捉えるか」が大きく異なっている点は非常に興味深いです。
デジタル投資は「希望の光」
マッキンゼーによると、2020年以前にはオンラインで洋服を買うことがほとんどなかった人でも、今ではファッション関連商品の購入の8割を自宅からネットで行うようになったそうです。
同時に、海外旅行に新たな規制が導入されたことで、これまで海外でハイブランド製品などの高級品を購入していた中国の消費者の多くが、国内で購入するようになりました。
同社はまた、中国人によるこのような高級品の購入額が2025年までに1780億ドルにも達する見込みであると予想しており、ファッション業界において、中国は世界で最も収益性が高く、急成長している市場だと分析しています。
また、マッキンゼーがファッション業界の経営者へ行った調査によると30%の経営者が「デジタル投資が今後の希望の光」だと答えていることから、デジタル投資とデジタルチャネル強化による中国市場の獲得が大きな課題であることが分かります。
関連記事
- “買いすぎ防止”スマホレジを導入したら、客単価が20%上昇 イオン「レジゴー」の秘密に迫る
イオンのレジに革命が起きている。買い物客が貸し出し用のスマートフォンを使い、かごに入れる前に商品をスキャン、専用レジで会計する「レジゴー」だ。スキャンにかかる時間は約1秒。レジでは決済のみを行うため、レジ待ちの渋滞も起きづらい。常に商品の一覧と合計金額が確認でき、利用者にとっては買い過ぎの防止にもなるレジゴーの導入で、客単価が向上したという。その理由を聞いた。 - なぜ、コメ兵は出店を急ぐのか? 戦略を支える、すごいAI
コロナ禍で多くのリアル店舗が打撃を受けているが、コメ兵ホールディングスは大規模な出店を計画している。傘下のコメ兵、K-ブランドオフそれぞれ今後3年間の間に100店舗出店の予定だ。理由はなぜなのか。また、それを支える「AI真贋」技術とは、何なのか。 - 「日本版ジョブ型雇用」の現在地 日立、富士通、ブリヂストンなど【まとめ読み】
「ジョブ型」とは結局何か? 日本でジョブ型の導入を進める7社の事例を通して、「日本版ジョブ型雇用」の現在地を探る──。 - 【解説】ウォルマートのIoTは、何がすごいのか
ウォルマートの業績が好調だ。背景にはIoT活用があるという。同社のIoT戦略や運用の何がすごいのか、またコロナ禍でどのようなことに役立ったのか。解説する。 - 崩壊寸前だったVoicy 離職率67%→9%に立て直した人事責任者が語る“人事の本質”
日本の音声コンテンツ市場の先頭を走る、音声メディア「Voicy」。3カ月で利用者数が2.5倍になるなど、コロナ禍で驚異的に成長している。しかし、たった1年半前は離職率が67%にのぼり、組織崩壊寸前だったという。そんな中でVoicyに入社し、抜本的な人事改革を行ったという勝村氏。一体どのような改革を行ったのか──?
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.