サントリー社長の「45歳定年発言」が炎上 会社員が“準備”しなければいけないこと:“いま”が分かるビジネス塾(3/3 ページ)
サントリーホールディングスの新浪剛史社長による、45歳定年制が必要という趣旨の発言が波紋を呼んでいる。経営者としての本音がポロっと出たわけだが、彼の発言からビジネスパーソンは何を学ぶべきなのだろうか。筆者の加谷氏は……。
いずれにせよライフプランの再構築が必要
すでに中高年になっていて、すぐに転職または独立の予定がない人は、当面は今の会社で働き続けることになる。現時点でもそうだが、60歳以降に再雇用された場合には、年収が3分の1など大幅ダウンとなるケースが多い。役職定年によって役職手当てがなくなる場合も同様である。
最優先で取り組むべきなのは、やはり生活のコンパクト化だろう。生活が“メタボ”になっていて、年収ダウンに耐えられないと次のキャリアを構築するどころの話ではなくなってしまう。まずは生活費の抜本的な見直しを行うことが重要である。コロナ危機で生活が激変した人も多いと思うが、これを一つのきっかけとしたほうがよいだろう。
若年層の場合、まだ時間的余裕があるが、筆者の経験上、20代、30代はあっという間に過ぎてしまう。今後10年の間に、日本の企業社会は諸外国と同様、明確なスキルがなければ仕事に就けない時代がやってくるので、それに備えてスキルを確立しておくことが重要である。
新しい雇用制度の下では、スキルに応じて賃金が決まる。明確なスキルがあれば仕事に困ることはないが、スキルの水準が変わらなければ、賃金が無条件で上がることもない。同じ業務であれば、年齢にかかわらず同じような賃金になるので、生活設計の考え方も変えざるを得ないだろう。
もし年齢に応じて生活費が増えていくというライフプランを想定する場合、スキルアップして賃金の高い仕事に転職するか、管理職として昇進していくという積極的なキャリアを描かないと生活が破綻してしまう。
いずれにせよ、まじめに働いていればとりあえず昇給する社会は、間もなく消滅する可能性が高い。根本的な価値観の転換が必要であることは間違いない。
加谷珪一(かや けいいち/経済評論家)
仙台市生まれ。東北大学工学部原子核工学科卒業後、日経BP社に記者として入社。
野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当。独立後は、中央省庁や政府系金融機関など対するコンサルティング業務に従事。現在は、経済、金融、ビジネス、ITなど多方面の分野で執筆活動を行っている。著書に「貧乏国ニッポン」(幻冬舎新書)、「億万長者への道は経済学に書いてある」(クロスメディア・パブリッシング)、「感じる経済学」(SBクリエイティブ)、「ポスト新産業革命」(CCCメディアハウス)などがある。
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