サントリー社長の「45歳定年発言」が炎上 会社員が“準備”しなければいけないこと:“いま”が分かるビジネス塾(2/3 ページ)
サントリーホールディングスの新浪剛史社長による、45歳定年制が必要という趣旨の発言が波紋を呼んでいる。経営者としての本音がポロっと出たわけだが、彼の発言からビジネスパーソンは何を学ぶべきなのだろうか。筆者の加谷氏は……。
定年引き下げよりも、年収激減の可能性が圧倒的に高い
経営者は、社員の個別年収にはあまり興味がなく、人件費の総額を気にしている。人件費総額を抑えることができれば、利益を容易に増やすことができるからだ。中高年がリストラの対象になりやすいのはそれが理由だが、困ったことに、こうした動きに拍車をかける法制度の整備が進んでいる。
今年の4月、企業に対して70歳までの就業機会確保を努力義務とする改正高齢者雇用安定法が施行された。これまでは65歳までの雇用義務だったが、4月1日以降は、70歳までの就業機会の確保が「努力義務」になった。現時点では「努力義務」に過ぎないが、大手企業にとっては義務化に近い内容といってよいだろう。
この法律の施行によって、社員の在籍期間はさらに5年伸びるので、企業にとっては総人件費がさらに増える。筆者がおおまかに試算したところによると、70歳まで雇用を継続し、会社の総人件費を今の水準で維持しようとすると、40歳以降の昇給はほぼ不可能となる。新浪氏が発言したように、40代の社員は企業にとってもまさに折り返し地点に位置しているのだ。
この議論は2〜3年前から活発になっており、コロナ危機がなければ経団連(日本経済団体連合会)は20年の春闘において、日本型雇用の見直しを議題として取り上げるはずだった。雇用制度の見直しはコロナ危機によって一時棚上げになっているだけであり、見方を変えれば新浪氏の発言は、コロナ収束を見越して「今度こそ本気で雇用制度を見直すぞ」という経済界側からの宣言と捉えることもできる。
政府が事実上の生涯雇用を求めている以上、定年が引き下げられる可能性は低いものの、逆に言えば、中高年の賃金カットは急激に進むと考えたほうがよい。こうした経済界のスタンスのぜひはともかく、一連の流れが不可避だということであれば、これからのビジネスパーソンはどう振る舞えばよいだろうか。
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