社員を「子ども」扱い? 野村HD「在宅勤務中も喫煙禁止」の波紋:そのマネジメントは正しいのか(1/4 ページ)
野村ホールディングスが在宅勤務であっても喫煙禁止とする施策を発表し、波紋を広げた。同社は健康経営の一環として説明するが、果たして効果はあるのだろうか。社員を「子ども」扱いする、安直なマネジメントではないのか。
名優、勝新太郎さんは、かつて自身のガンを公表する記者会見の席上で、「タバコはやめた」といいながらおいしそうにタバコをふかして見せました。
勝さんがタバコを吸い始めた途端、周りにいた記者たちは一斉にツッコミを入れましたが、同時に笑い声も起きるような穏やかな空気に包まれました。それは、大物である勝さんに対して強くいえる人がいなかった、という面もあるのかもしれませんが、命にかかわる病気を公表する、ともすると深刻になってしまいそうな場の雰囲気を和ませた、“大人”のユーモアとして受け止められていたように思います。
当時は一般企業のオフィス内でも普通に喫煙していた時代でした。それは社会が今より未成熟であった証ともいえますが、まだ、勝新太郎さんのような型破りな魅力を放つ存在が活躍できるおおらかな土壌が残っていたともいえます。
それに対し、今やオフィス内禁煙は当たり前です。環境・社会・企業統治の観点に着目したESG投資や健康経営といった概念が広まるにつれ、喫煙者に対する見方は厳しくなってきています。嫌煙者にとっては望ましい風潮ですが、喫煙者にとっては窮屈で息苦しい世の中となりました。
そんな中、野村ホールディングス(HD)が在宅勤務者も対象として、就業時間中は全面禁煙とする施策を発表し、話題を呼びました。
出社体制での喫煙による、2つの問題
会社に通勤している場合、職場の中で喫煙すると大きく分けて2つの問題が発生します。
一つは受動喫煙など周囲への影響です。喫煙者がいると周囲に煙が漂うため、他社員たちの健康まで害してしまうおそれがあります。また、喫煙後もしばらくは呼気を通じて周囲の人が2次喫煙してしまうこともありますし、不快な臭いを嫌がる人もいます。
もう一つの問題は、離席時間の発生です。座席での喫煙を禁止する代わりに、喫煙スペースを設ける職場が増えました。すると、喫煙のたびに離席して座席に戻るまで、実質的な臨時休憩が発生してしまいます。喫煙者が離席している時間も給与は支払われることから、非喫煙者との間で不公平感が生じますし、喫煙者自身の生産性を下げることになるという指摘もあります。
野村HDの「就業時間中の全面禁煙を実施する」という施策は、こうした問題に対する有効な解決策になり得ると思います。しかしながら「在宅勤務者も対象にする」ことについては、そのまま同じ理屈が当てはまるとはいえません。
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