やはり、人生は“親ガチャ”で決まってしまうのか 「遺伝」と「社畜」の密接な関係:“いま”が分かるビジネス塾(1/3 ページ)
「親ガチャ」というキーワードが論争の的となっている。この言葉に多くの人が反応するのは、人生に「諦め」の気持ちがあるのかもしれない。努力しても意味がないのは、本当なのか……。
「親ガチャ」というキーワードが論争の的となっている。この言葉に多くの人が反応するのは、社会に対するある種の「諦め」が台頭しているからだろう。だが努力しても意味がないのかは、どのような働き方をするのかによって変わってくる。知名度の高い会社に入り、年功序列で昇進することを人生の目標とするならば、親ガチャの影響が大きいことは否定できない。だが、そうでない場合、遺伝はキャリアに大きな影響は及ぼさない。
スポーツや単純な知能テストは親の影響が大きい
このキーワードは、「子どもは自分で親を選ぶことができず、育つ環境も選択できない」という現実について、カプセルトイの購入で偶然性を楽しむ「ガチャ」に例えたものである。では親によって自身の能力がほとんど決まってしまうというのは、科学的に見て事実なのだろうか。
子どもの学習能力や身体能力が親から大きな影響を受けるのは紛れもない事実である。学術やスポーツは基本的に実力勝負の世界であるにもかかわらず、親子3代にわたって学者を続けている、あるいはスポーツ選手になっているケースは枚挙にいとまがない。
特にスポーツはその傾向が強く、残念だが親ガチャはその通りなので、親が運動音痴だった人は運動が不得意な可能性が高い。学業も同じで、知能テストや受験勉強など、単純な知能を競うゲームにおいては遺伝の影響が大きい。大雑把に言ってしまうと、半分は親の遺伝で子どもの能力が決まると言われる。
日本の場合、会社員の選抜はほとんどが単純な学力テストに依存している。近年は学歴不問や総合力を打ち出す企業が増えているが、現実には大学名(つまり偏差値)による足切りが行われており、学校のテストで高い点数を取り、偏差値の高い大学に入ったほうが有利なのは間違いない。
学校のテストや受験は総合力で勝負するのではなく、単純なテストに過ぎないため、経験値も大きく作用する。親の経済力が高く塾などに行けた人は、そのぶんだけ経験値が増えるので、やはりテストにおいて有利になる。
いわゆる偏差値が高い学校に入った人は大抵、類似問題をいくつもこなして共通パターンを見つけ出し、頭に叩き込むというやり方でテストの点数を上げていたはずだ(実際、それをやれば確実に点数は上がる)。こうした(あまり意味があるとは思えない)行為に集中できるのかどうかも、もともとの能力や環境に依存している可能性がある。
関連記事
- 「オレが若いころは」「マネジメント=管理」と思っている上司が、ダメダメな理由
「オレが若いころは……」「マネジメントとは管理することだ」といったことを言う上司がいるが、こうした人たちは本当にマネジメントができているのだろうか。日本マイクロソフトで業務執行役員を務めた澤円氏は「そうしたマネージャーは、その職を降りたほうがいい」という。なぜかというと……。 - 7割が「課長」になれない中で、5年後も食っていける人物
「いまの時代、7割は課長になれない」と言われているが、ビジネスパーソンはどのように対応すればいいのか。リクルートでフェローを務められ、その後、中学校の校長を務められた藤原和博さんに聞いた。 - 「世界一勤勉」なのに、なぜ日本人の給与は低いのか
OECDの調査によると、日本人の平均年収は韓国人よりも低いという。なぜ日本人の給与は低いのか。筆者の窪田氏は「勤勉さと真面目さ」に原因があるのではないかとみている。どういう意味かというと……。 - 物価は上昇しても「給料」は上がらない、根本的な問題
4月から公共料金や食品など多くの商品が値上がりしているが、ビジネスパーソンの給与も上がるのだろうか。筆者の加谷氏は否定的な見方をしていて、さらに下落するかもしれないと予測している。なぜかというと……。 - こんなに頑張っているのに、なぜ日本だけGDPが回復しないのか
日本経済の復活がうかがえるような、データがなかなか出てこない。先進国と比べて、GDP増加率は低く、賃金も低い。多くのビジネスパーソンは懸命に働いているのに、なぜパッとしないのか。筆者の窪田氏は「日本社会のシステムがブラック企業化しているから」と見ていて……。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.