やはり、人生は“親ガチャ”で決まってしまうのか 「遺伝」と「社畜」の密接な関係:“いま”が分かるビジネス塾(2/3 ページ)
「親ガチャ」というキーワードが論争の的となっている。この言葉に多くの人が反応するのは、人生に「諦め」の気持ちがあるのかもしれない。努力しても意味がないのは、本当なのか……。
家庭環境はどちらに転ぶか分からない
親から引き継いだ能力で就職が決まってしまうとなると、多くの人が人生を諦める必要が出てくるので、これが親ガチャというキーワードを生み出したと考えられる。だが、この話には「いい学校に進学して著名企業に入ることが人生最大の目標である」という無意識的な前提条件が存在する。だが、そうした枠組みを取り払い、純粋にビジネスで成功することを目標とするならば、話は変わってくる。
先ほどから説明しているように、学業成績や身体能力は遺伝から大きな影響を受けるが、それでも比率は半分である。人間の行動における残りの半分は、遺伝以外の要素から多分に影響を受けている。具体的に言えば、積極性やコミュ力、相手を理解する力など、知能テストでは測れない能力形成は遺伝的要因が低いことが知られている。
しかも困ったことに、こうした能力は分かりやすい形で家庭環境と結び付けることができない。
ビジネスで成功するにあたって積極性は重要だが、親が積極性を養う教育をしたからといって子どもが積極的になるとは限らず、逆に怠惰な親を反面教師にして子どもが積極的なるケースも少なくないのだ。怠惰な親を見て、子も怠惰になるケースがあるので、明確な法則性を見つけ出せない。つまり、自身の性格形成については、親で決まってしまうわけではないものの、やはり運任せという部分が大きいことになる。
この話を聞いて、結局は親ガチャと変わらないと思ってしまったかもしれないが、両者には大きな違いがある。
同じ偶然性に左右されるとしても、親の能力や家庭環境によって人生が決まってしまう状況と、自分の性格は自分自身のものなので変えられない状況とでは、気持ちの持ち方が変わってくるのではないだろうか。
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