やはり、人生は“親ガチャ”で決まってしまうのか 「遺伝」と「社畜」の密接な関係:“いま”が分かるビジネス塾(3/3 ページ)
「親ガチャ」というキーワードが論争の的となっている。この言葉に多くの人が反応するのは、人生に「諦め」の気持ちがあるのかもしれない。努力しても意味がないのは、本当なのか……。
同じ偶然でも意味がまったく違う
起業家などビジネスで成功した人の多くが「運を呼び込む努力をした」と語っている。これは少し抽象的な表現だが、要するに「チャンスというのは一定確率で存在しているので、多くのチャンスをムダにしないよう努力すれば、チャンスを生かせる可能性が高くなる」という意味である。
ビジネスというのは不思議なもので、積極的だった人が、その積極性があだになって失敗するケースもあれば、慎重な人がその性格を生かしてチャンスをモノにすることもある。その逆もありで、慎重すぎてチャンスを生かせない人はたくさんいる。
受験で良い学校に入り、著名企業に在籍して一生を終える人生を目指す限り、親ガチャについてはある程度、受け入れざるを得ない。しかし、もっと広くチャンスを生かす人生を歩みたいと思うのであれば、親ガチャは大した問題ではない。自由競争のビジネスの世界では、家庭環境が悪かったことが逆にプラスに働くこともあれば、それが不利になることもあり、どちらに転ぶのかは偶然に左右されるからだ。
このような偶然すら望ましくないということであればどうしようもないが、勝ち負けが最初から決まっている勝負に比べれば、ずっとマシではないだろうか。同じサラリーマンになるにしても、企業の社風はさまざまである。偏差値で昇進が決まってしまう企業とそうでない企業ははっきりと区別できるので、親ガチャを回避したいのであれば、後者を選択したほうがよい。
加谷珪一(かや けいいち/経済評論家)
仙台市生まれ。東北大学工学部原子核工学科卒業後、日経BP社に記者として入社。
野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当。独立後は、中央省庁や政府系金融機関など対するコンサルティング業務に従事。現在は、経済、金融、ビジネス、ITなど多方面の分野で執筆活動を行っている。著書に「貧乏国ニッポン」(幻冬舎新書)、「億万長者への道は経済学に書いてある」(クロスメディア・パブリッシング)、「感じる経済学」(SBクリエイティブ)、「ポスト新産業革命」(CCCメディアハウス)などがある。
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