実は3種類ある「プリンスホテル」 売り上げ1位なのに、実態がよく知られていないワケ:瀧澤信秋「ホテルの深層」(2/3 ページ)
規模や知名度などから、日本においてホテルの代名詞的な存在とされてきた「プリンスホテル」。2007年からは“新生プリンスホテル”として、ブランド戦略を進めている。
ブランド浸透への課題
東京を中心とした首都圏のプリンスホテルについて、同社では「東京シティエリア」「東京都市圏エリア」と区分している。
前者は先述した「ザ・プリンス パークタワー東京」をはじめとした、品川や高輪・芝公園といったまさにプリンスホテルをイメージするエリアの施設であり、後者は「新宿プリンスホテル」「新横浜プリンスホテル」「川越プリンスホテル」「サンシャインシティプリンスホテル」といったターミナルや郊外都市に点在する施設に分けられる。
都市圏エリアは、生活圏・生活の延長にある“コミュニティーホテル”という位置付け。他方シティエリアは、“生活圏を超えて非日常感をイメージさせるホテル”とされ、担う役割も違う。
ところで、先ほどからホテル名について「ザ・プリンス」「プリンスホテル」といった書き方をしているが、プリンスホテルと一口に言ってもさまざまなブランドがある。このようなチェーンの中でカテゴライズしたものを“サブブランド”ともいうが、プリンスホテルでいえば上位カテゴリーから「ザ・プリンス」「グランドプリンスホテル」「プリンスホテル」が主幹3ブランドということになる。
また、最近では機能性や利便性を追求した宿泊特化型タイプの新ブランド「プリンス スマート イン」も展開している。
そもそも、基幹3ブランドの“ブランド化”がなされたのが07年。過去、紆余曲折を経てきたプリンスホテルであったが、ブランド化は“新生プリンスホテル”という積極的な情報発信における主要戦略として位置付けられた。
そもそも従前のプリンスホテルは、「プリンスホテル」という“1ブランド”しかなかった。その後の上述のように3ブランド化したわけだが、今でも「分かりにくい」などさまざまな意見があるようだ。とはいえ、価格帯や用途もさまざまだった複数のホテル=1ブランドだったものが、カテゴライズされ多ブランド化するのは至極自然の流れであった。
多ブランドということは、当然クラスによってベッドのメーカーにはじまりサービスのレベルも変わることになる(変えなければならない)。一方でコンセプトや調度品、サービスマニュアルなどを作ることはできたしとても、ブランドを浸透させていくのは別の話だ。実際に現場へ落とし込み、ゲストに認知されるまでには相当な時間を要するのは何もプリンスホテルに限った話ではない。
プリンスホテルの3ブランドの認知はいまだ途上であるともいえる。それは、伝統的に“プリンスホテル”としてのイメージが強い有名施設があることも一因だろう。「品川プリンスホテル」「軽井沢プリンスホテル」「苗場プリンスホテル」といったプリンスホテルのイメージをリードしてきた施設だ。そんなプリンスホテルに対する一般的なイメージをどう変化させ浸透させていくのかは今後の課題といえる。
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