ホテル1室のアメニティー、清掃費用は一体いくら? ホテルの気になる“原価”あれこれ:瀧澤信秋「ホテルの深層」(1/5 ページ)
コロナ禍で価格が下がっているホテル利用料金。そもそも原価はどのくらいなのだろうか。運営会社に取材を試みた。
コロナ禍で需要が激減しているとはいえ、旅をする者にとってやはりホテルは身近な存在だ。ネットなどで目にするホテルの料金は、基本的に需給に応じ変動している。インバウンドが活況を呈していたころならば、シンプルなビジネスホテルでも1万円以上という表示も珍しくなかった。
需給に応じて収益の最大化を図るのはビジネスとして当然であり、乱高下する料金とはいえ“まぁそんなもんだろう”と受忍してきた人も多いのではないか。
そんなホテルの料金変動が、コロナ禍で低水準に推移していることは周知の事実だ(一部例外を除いて)。供給過多になれば、他のホテルよりも料金を下げて予約の流入を図ろうとするのは当たり前とも思えるが、中には極端な例も散見される。
需要が逼迫していた頃は1万円ほどしていた都市部のあるビジネスホテルが、2500円のプランを出していたのを見たときは“隔世の感”すら覚えてしまった。
そんな低価格の設定を多く見かけるようになって、ふと考えてしまうのが“ホテルの原価”だ。原価といっても不動産価格といった億単位の話でなく“ホテルが1泊1室提供するためにかかる費用はいくらか”という意味での話だ。本稿ではこれらを「ホテルの原価」とする。背に腹は代えられないとはいえ、こんな安い料金でホテルはやっていけるのか? というのも単純な疑問だ。
原価と聞いてまず思い浮かぶものはアメニティー類だろうか。ビジネスホテルであれば歯ブラシにカミソリだけといったシンプルなケースは多いが、高級ホテルともなれば多種多様。ミニボトルに詰められた高級ブランドのシャンプーやコンディショナーといったものから、化粧品類までそろうことも。
アメニティーばかりではない。交換するシーツやピローケース、タオルのコストはもとより、清掃スタッフの人件費も気になるところだ。
関連記事
- バブルの名残 温泉街の「大型施設」が廃墟化 鬼怒川と草津の違いと「大江戸温泉物語」の戦略
コロナ禍がもたらす温泉街への影響は甚大だが、「温泉の魅力」として考えさせられるのが“街づくり”という点だ。筆者は「施設そのもので集客できる強い宿は例外的で、温泉地の魅力自体が集客を左右する」と指摘する。 - “はがれにくい”けど“はがしやすい” なぜ業界トップのアヲハタは2年かけて「のり」を開発したのか
アヲハタジャムのラベルが剥がしやすいらしい。なぜ? - ホテル業界復活のカギは「朝食」にあり? コロナ禍でヒルトンが進めた115項目の改善
ホテルにとって朝食はキモ。“朝食でホテルを選ぶ”人も多いだろう。人気の尺度という点で朝食の良しあしは注目されるポイントになっているのは事実だ。筆者はソーセージと焼き鮭に注目する。 - コロナ禍でも黒字のアパホテル 常識破壊の”強さ”と悲願の10万室が生んだ“功罪”
アパホテルが2021年5月10日に創業50周年を迎えた。いまや日本を代表するホテルブランドとして圧倒的な知名度を誇る同社。コロナ禍の中、2020年11月期連結決算で黒字を確保したという発表は、ホテル評論家としても衝撃的だったと筆者は語る。 - 寮発祥のドーミーインが「大浴場」をどんどん展開するワケ 手掛ける「和風ビジネスホテル」とは?
「宿泊施設のカテゴリーボーダーレス化」が進んでいるが、ドーミーインのサブブランド「御宿 野乃」もそのひとつだろう。 - 爆増した3万ブース超のカプセルホテル “ブーム終焉”の理由はコロナ禍だけじゃなかった
近年、訪日外国人旅行者の激増により宿泊施設不足が露呈、数多くのホテルなどが誕生した。施設数で群を抜いていたカテゴリーが「簡易宿所」といわれる施設で、その代表格が「カプセルホテル」や「ホステル」と呼ばれる宿泊施設だ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.