よい属人化と悪い属人化 「優秀な総務部」を作るポイント:「総務」から会社を変える(1/3 ページ)
総務の課題である「属人化」。この属人化には悪いものもあればよいものもあると解説するのが、月刊総務編集長の豊田健一氏だ。どういうことか。
ベストセラーとなった不朽の名著、『ビジョナリー・カンパニー』。その中にこのような言葉がある。
「時を告げるのではなく、時計を作る」
この言葉の意味するところを解説すると、偉大な企業は、ビジョンを持ったカリスマ経営者により偉大になるのではなく、会社を築くこと、つまり、時計を作ることにより、偉大となる――ということである。
この表現を目にしたとき、筆者は「総務も同じではないのか?」という思いが湧いた。
数多くの取材を通じて感じるのは、優秀といわれる総務部署を抱える企業には、優秀な総務パーソンの存在があるということだ。少数の優秀な総務パーソンのキャラクターやスキル、総務に対する思い、総務という仕事が持つ可能性に対する信念、会社や従業員に対する愛情――そのような個人に属するものにより、総務を、そして会社を大きく変えているように思う。
『ビジョナリー・カンパニー』の表現に合わせれば、ビジョンを持ったカリスマ総務パーソンといった「個人」に依存するのではなく、優秀な組織を築くことにより優秀な総務を実現できる、ということになる。では、果たしてそれは実現可能なのだろうか。あるいは、どのように実現できるのだろうか。
解消すべき「総務の属人化」
総務の悪いところとしてよく指摘されるのが、業務の属人化である。タコつぼ化、サイロ化とも表現され、その担当者しか分からない、処理できない、という問題だ。
そもそも総務は「社内のサービス業」であるにもかかわらず、こうした属人化によって「すいません。Aさんは今日休みなので、明日の対応でもよいですか?」――というように答えるのもよくあることだ。まさに、人に依存した状態である。
属人化を防ぐためには、まず、業務の可視化・共有が重要だ。属人化の大きな原因は、業務のブラックボックス化であり、これをなくすことで大きな改善が可能になる。
例えば、マニュアルを作成するというのもよいだろう。ただ、せっかく作ったマニュアルも、環境変化や担当者の経験値により、徐々にマニュアルから逸脱した対応が横行してしまい、なし崩しになることもあり得る。
となると、優秀な総務組織を築くには、従来総務が担当していた作業や処理を、思い切ってなくす、ということが必要なのではないだろうか。
そもそもマニュアルを作成でき、誰でもできる仕事は、インハウスで行う必要もないし、「型化」できているのであれば、システムに置き換えられるはずだ。総務の単純作業はBPOやテクノロジーに置き換え、極力属人化を排除する、これが優秀な総務部の条件といえるだろう。
総務の目指すべき世界観
一方、「よい属人化」と呼べるものもある。
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