「中途採用で営業力強化」はなぜ失敗? 良かれと思った組織作りの落し穴:本当に必要な施策は何か?(1/3 ページ)
多くの営業組織が、営業担当者のスキル向上や育成に課題を抱えている。その解決策として最も多く選ばれるのが「中途採用で営業力を強化する」という手法だが、中途採用に依存しすぎると、取り返しのつかない失敗を招いてしまうケースもある。筆者が見てきた実際の失敗例をもとに、何が求められているのかを考える。
新型コロナウイルスの感染拡大や、昨今のテクノロジーの進歩により、営業の在り方が大きく変わってきました。従来の訪問営業だけでなく、オンライン商談が当たり前となっています。
こうした変化に伴い、営業組織の支援事業を行っている私のもとに、営業組織の在り方やマネジメント方法の相談を受ける機会が増えてきました。
現在、多くのセールスパーソンが「オンライン上での営業人材の育成はどうすれば良いのか」「どのように後輩をマネジメントしていくべきか」という悩みを持っているのです。
本記事では、当社が行った営業組織に関する調査の結果に触れながら、私が実際に見てきた失敗例をもとに、どうすれば採用と組織構築を両立していけるのかを考えていきたいと思います。
著者:大矢剛大(ブレーンバディ代表取締役)
大学卒業後、新卒で入社した株式会社マイナビを経て、株式会社リクルートキャリア(現:株式会社リクルート)に転職。リクルートキャリアでは、最優秀新人賞、MVP、アワードなど複数受賞。また、自組織から表彰者も多数輩出させた。その後、HRスタートアップに事業責任者として創業から携わり、事業立ち上げや営業組織の構築を行う。2020年に独立し、複数企業の営業コンサルティングを行う。
2021年4月に本格的にセールス・イネーブルメント事業を行うべく株式会社ブレーンバディを設立。代表取締役に就任。
Twitter:@YoshihiroOya
「スキルのばらつき」「パフォーマンスの差」に課題
当社では、現状の営業組織の全体像を知るべく、新規の法人営業経験のある会社員220人を対象に営業組織に関する調査を行いました。
営業スキルの課題を聞いたところ、「スキルのばらつき」が最も多く81.9%、次いで「パフォーマンスの差」が80.4%と、それぞれ8割以上がこうした悩みを持っていることが分かりました。
営業の育成に関しては、73.7%が「先輩営業に一任しており、内容のばらつきがある」と回答。多くのセールスパーソンが、営業スキルや営業育成の属人化に危機感を覚えているといえるでしょう。
注目していただきたいのが、こうした課題の解決策についてです。
営業組織を良くする施策、1位は「中途採用」だが……
営業組織力向上における施策の1位は、「中途採用を行うこと」(38.8%)でした。多くの企業が営業組織力を向上するために優秀な人材の採用に必死になっているのです。
もちろん即戦力人材の採用によって売り上げインパクトを与えられることは多く、実際に効果的な施策の一つであることは間違いありません。しかし、中途採用に依存しすぎたことで、取り返しのつかない失敗を招いてしまうケースもあります。
ここからは、私が実際に見てきた失敗例をもとに、どうすれば採用と組織構築を両立していけるのかを考えていきたいと思います。
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