「中途採用で営業力強化」はなぜ失敗? 良かれと思った組織作りの落し穴:本当に必要な施策は何か?(2/3 ページ)
多くの営業組織が、営業担当者のスキル向上や育成に課題を抱えている。その解決策として最も多く選ばれるのが「中途採用で営業力を強化する」という手法だが、中途採用に依存しすぎると、取り返しのつかない失敗を招いてしまうケースもある。筆者が見てきた実際の失敗例をもとに、何が求められているのかを考える。
なぜ、中途採用で失敗したのか? 2つの事例
事例1:都内IT系広告会社のケース
設立6年のその会社は、Web広告を中心とした事業を営んでおり、4年目まで売り上げは順調に右肩上がり、案件が増えると同時に納品担当の社員も増えていきました。
そこでさらに成長を加速すべく営業担当の中途採用に踏み切ります。
業界の営業経験者にターゲットを絞り、人材紹介や求人広告を使って、毎月新しい人材を採用していきました。採用した分、対応できる案件が増えていき、順調に成長しているように見えました。
しかし、そこから半年たったあたりから様子が変わっていきました。新しく採用した営業担当が、ポツリポツリと退職し始めたのです。
それ以降は、入社してもすぐに人が辞めてしまうことが続くようになり、結局営業担当が増えず、売り上げも伸びなくなってしまいました。
目先の「売り上げ達成」のために中途採用を実施するも、続けてもらえず、採用しては退職、採用しては退職という負のスパイラルに陥ってしまったのです。
事例2:都内不動産会社のケース
2つ目の会社は大手不動産会社。社員数も数千人、営業担当だけでも1000人を越えているような大きな会社です。
その会社は、営業力を強みに創業以来毎年右肩上がりの業績をあげており、拠点も日本全国に構えています。
創業当初から新卒採用・中途採用ともに大量の人材を採用して組織を強化してきました。
しかし、早期の離職も多かったため、本来であれば、100人の採用すれば十分であるにもかかわらず500人を採用するなど、最初から“辞める前提”で計画を組む採用を行ってきました。
その方法だと、人が採りやすかった時代はよかったものの、近年の少子高齢化による有効求人倍率の上昇や、企業情報口コミサイトの浸透によって昔のように大量の応募数の確保が難しくなってしまいました。
「辞める前提」で大量採用していたことによって、今後の営業組織拡大に苦戦するようになってしまったのです。
この2つの事例には共通点があります。それは、社内の人材育成の仕組みを整えることを怠ってしまっていたという点です。
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