電動化とラージPFを両立する、マツダ新工場の「縦スイングと横スイング」:池田直渡「週刊モータージャーナル」(2/5 ページ)
「xEV計画」と直6縦置きのラージプラットフォーム。これを進めていくためには、当然生産設備を大幅に改変しなくてはならない。普通ならば、従来設備を適宜改良して、xEVとラージに対応させるだけでいいのだが、マツダはこれを大きなチャンスに変えようと考えた。
縦スイングと横スイング
という2つの問題を解決するためには、マツダは「どこの工場」でも「どこのライン」でも「どの車種」でも「順不同」で作れるようにしなければならないことになった。
例えばここしばらく、マツダでは部品不足を受けてラインが時々止まっていた。広島と山口の2工場にラインがあるのだが、極論をいえば山口のラインを全部止めて、広島の工場をフル稼働させた方が効率はずっと良い。もちろん止めるのは広島でも山口でも構わないし、そこまでの大規模減産が頻繁に起こっているわけではないのだが、あくまでも一例だ。ところがラインそのものに車種依存性があって、ある車種は広島では作れないということになっていたら、動かしたくない方のラインも細々と動かさなくてはならなくなる。
つまり今回、xEVとラージによるフレキシブル化要求を奇貨として、何時でもどこでも何でも作れる体制を整えることがマツダの企業体力強化につながるということが、今回の工場刷新の要諦である。
マツダはこれを「縦スイング」と「横スイング」と名付けた。縦スイングとは、第6世代以来マツダが進めてきた混流生産のことで、同じラインにおいて、順不同にどんな車種でも作れることを意味している。ライン上に流れるクルマが、Mazda 3の次にCX-5、その次はMazda 2、次はロードスターという具合に、どんどん違う車種が生産できる体制だ。
横スイングとは、概念的には先に説明した通り、どの工場のどのラインでも、どの車種でも作れるということだが、現時点では防府の第2ラインのみがラージとスモールの混流生産が可能になっている。今後この改良は他のラインにも適用されていくだろう。これによって、車種ごとの需要の増減に対して効率の良い方法をチョイスして生産できるようになった。ラインと車種を選ばずに完全なフレキシビリティを実現するシステムである。
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