Cookie対応は「ポップアップを導入したから安心」ではない 改正法に備え、企業はどこまで対応すべきか:22年4月に迫る個人情報保護法改正(2/2 ページ)
これまでCookieの扱いについては明確な指針が示されてこなかったが、22年4月より施行される改正個人情報保護法で、国内法としては初めて明確な規制が加わることになる。
コンプライアンスだけでなくマーケティングの観点も重要
続いてアンダーワークス 代表取締役 田島学氏が登壇し、「With Cookie時代の顧客同意管理の進め方 〜あらためてCookieを理解した上でコンプライアンスに沿った同意管理を実現する〜」と題したプレゼンテーションを行った。
アンダーワークスは、デジタルマーケティング領域を専門に扱うコンサルティングファーム。デジタルマーケティングに関する戦略策定からツール実装までをワンストップで支援するほか、プライバシー・コンプライアンス領域のコンサルティングにも力を入れており、GDPRが施行される前からCookie同意管理ツールなどを使った企業のコンプライアンス対応の支援も行ってきた。
田島氏は、企業がCookieを適切に扱っていくためには改正個人情報保護法やGDPRをはじめとする各種法令をしっかりおさえるとともに、テクノロジーに対する理解も不可欠だと強調する。
「Cookieの基本的な仕組みをあらためて理解しておくとともに、『1st Party Cookie』と『3rd Party Cookie』の違いや、HTMLに埋め込まれたJava Scriptを使ってCookieがダウンロードされる仕組みをきちんと把握しておく必要があります」(田島氏)
現在デジタルマーケティングの世界では、Cookieが廃止された後の「Cookieレス」「After Cookie」のトピックが取り沙汰されている。確かに複数ドメインをまたいで使われる「3rd Party Cookie」廃止の動きは既に始まっているものの、同じドメイン内で使われる「1st Party Cookie」に関しては、Webページ間のセッション管理を行う仕組みとして依然として重要な役割を担っており、代替技術が普及するまではまだ当分の間使われると見られている。従って性急に「After Cookie」の対策に走る前に、まずは「With Cookie」のための適切な施策を検討・導入することが重要だと田島氏は言う。
なお今日では、ユーザーがWebサイトを初めて訪れた際に自動的にダウンロードされるCookieのうち、かなりの部分はマーケティングツールを用いて生成されている。マーケティングツールを導入する際には多くの場合、サイトのHTMLにCookieのダウンロード処理を実装したJavaScriptを埋め込み、ユーザーをトラッキングするためのCookieの自動ダウンロードを行う。
その一方で、現在多くの企業ではマーケティング部門が独自の判断でクラウド型のマーケティングツールを導入しており、自社でどのようなツールが現在使われているのか把握しづらくなっている。そのため自ずと、Cookieの利用に関するガバナンスも効きにくくなっているのが実情だ。従って、まずは自社でどのようなマーケティングツールが導入されており、それらがどのようなJavaScriptをサイトに埋め込んでいるか、その利用実態の調査と棚卸を行うことが先決だという。
それと同時に、田島氏は「将来も見据えた実践的な対応を検討することも重要だ」とも述べる。
「現在、さまざまな顧客接点から取得した顧客データを統合してマーケティングに活用する手法が普及しつつあります。従って、たとえ現時点では個人情報とひも付いておらず、よって取得同意をとっていないCookieについても、将来的にはひも付けて個人情報として扱うことになる可能性もあります。そうしたことも加味した上で、今から全てのCookieの同意管理を行っておき、将来に備えるという方法も検討する価値が十分あるでしょう」(田島氏)
関連記事
- コロナ後のマーケティング市場には、どんな変化があるのか 2021年カオスマップが公開
デジタルマーケティングの支援を行うアンダーワークスは7月13日、国内の主要マーケティングテクノロジーを分類してまとめた「マーケティングテクノロジーカオスマップ JAPAN 2021」を公開した。代表が語る「2021年のマーケティングテクノロジーの特徴の、4つの“V”」とは? - 「優秀だが、差別的な人」が面接に来たら? アマゾン・ジャパン人事が本人に伝える“一言”
多様性を重視するアマゾン・ジャパンの面接に「極めてだが優秀だが、差別的な人」が来た場合、どのような対応を取るのか。人事部の責任者である上田セシリアさんに聞いた。 - 「売り上げが落ちてもいいから、残業をゼロにせよ。やり方は任せる」 社長の“突然の宣言”に、現場はどうしたのか
「来年度の目標は、残業時間ゼロ」──社長の突然の宣言は、まさに寝耳に水の出来事だった。準備期間は1カ月。取り組み方は、各部門に任せられた。現場はどう対応したのか? - “パートは低賃金で当然”の日本で、なぜ「全従業員を正社員化」できた? イケア・ジャパン人事に聞く
いわゆる「同一労働同一賃金法」より約6年も前に、イケア・ジャパンはパートタイマーを含め全従業員を正社員雇用に切り替えた。なぜそのようなことができたのか。イケア・ジャパン人事にインタビュー。 - 障害者雇用で「障害者ができそうな仕事を探す」企業は、既にやり方を間違えている
障害者を雇用するにあたり、多くの企業は社内で「障害者にやってもらえる仕事はあるか」と聞いて業務を探しているが、これは最適な方法ではなく、もっとうまくいくやり方があるとリクルートスタッフィングの飯尾朋子さんは言う。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.