ビジネスマンの給料の減少が止まらない。副業に走るしかないのか?:副業の容認は朗報か(3/3 ページ)
先日、国税庁から2020年の給与所得の統計が公表されたが、2年連続のマイナスだという。ビジネスマンの給料の減少が止まらない。
副業の容認増加は朗報か
ここ数年、「副業の時代」などと言われ、能力のある人はどんどん外で稼いでもかまわないという風潮もあったが、実態はどうなっているのだろう。
パーソル総合研究所の公表資料(対象:経営層・人事で人事管理について把握している1500人)によれば、自社の正社員の副業を容認している企業の割合は55%で、2018年の前回調査に比べて3.8ポイント上昇したという。しかも、副業を全面容認している企業は、前回調査比9.3ポイント増の23.7%を占めるまでになった。同時に、全面禁止企業は、前回調査に比べて3.7ポイント減の45.1%となり、数字だけみれば、少しずつではあるものの、副業の容認は進んでいるということなのだろう。
しかし、問題はその理由だ。理由のトップ(34.3%)は、「従業員の収入補填」だ。自分の会社で給与が払えないから外で稼いでくれということか。
副業を受け入れる企業側も同様だ。その理由としているのは、大手企業で「新規事業の立ち上げ/推進」や「新たな知識・経営資源の獲得」「オープンイノベーションの促進」などらしく、要は自社で育成するよりも手っ取り早く副業したい人からノウハウがほしいということにしか見えない。
こうなると、副業を禁止する企業の理由のトップ「自社の業務に専念してもらいたい」がまっとうなものに見えてくる。
これでは、さらにビジネスマンの貴重な能力が搾取されるばかりではないか。しかも、見た目には、「自由な働き方」などということを標榜しているのだからたちが悪い。
本当に自社内で生かせない能力を他社で生かすことなど可能なのだろうか。どの市場でも生かせる「個の能力」を持つビジネスマンは少数だろう。そういう人たちは、すでに現在の組織から十分な給与をもらっているはず。
厳しい言い方かもしれないが、自分のいまの仕事で稼げない人が、仕事を変えて稼げるとは到底思えない。企業側からしたら、「どうぞどうぞ」となっていくのは、自然な流れだろう。
ビジネスマンにとっては、何年も受難の時代が続くが、組織に頼らない働き方を模索する時代がこれからも続くのだろうか。(猪口 真)
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