「日本のアニメ」は家電や邦画と同じ道を歩んでしまうのか:スピン経済の歩き方(5/6 ページ)
技術や品質が「下」だとみくびっていた相手に、いつの間にか追い抜かれてしまう。そんな悪夢がやって来るのだろうか。白物家電や邦画が追い抜かれたように、「日本のアニメ産業」も負ける日がやって来て……。
中国アニメが日本を追い抜かす日
今年も中国では、朝鮮戦争を題材にした『長津湖』が大人気であるが、一方、中国の人気女性コメディアンが監督した『こんにちは、お母さん』という作品もヒットしている。このような幅広い作品を量産して、評価も受けるようになってきたということは、海外の映画会社を買収していくうちに、国産のコンテンツ制作能力も上がってきた可能性があるのだ。
さて、そこで話を「アニメ」に戻そう。今の中国アニメはレベルが上がってきて市場も成長しているとはいえ、まだまだ世界で人気とは言えない。一方、日本のアニメは市場も縮小してきたが、世界的に高い評価を受けている作品が多数ある。技術もある。名声のあるクリエイターも多数いる。そのような意味では、中国に負ける要素はない。
が、そこでもし中国が国策としてアニメ産業を発展させていくため、日本の出版社や漫画原作者、アニメ制作会社に触手を伸ばしてきたらどうか。
映画産業を発展させるため、中国は地政学的にバチバチやっている米国の映画会社まで買収している。これだけ近くて、経済的にもかなり依存している日本で、同じことをやらない理由が見当たらない。
そうなれば、これまでお話をしてきたようなメカニズムで、中国のアニメ産業は一気に発展していくだろう。ジブリ作品が足元に及ばないような巨額の資金が投じられ、大作がつくられ市場が活性化する。人材も多く集まるので、若いクリエイターの中から、「中国の宮崎駿」や「中国の庵野秀明」が登場してもおかしくない。
つまり、これまでは「下」に見ていた中国アニメが、日本のアニメに肩を並べる、いや、追い抜かす時代が来るかもしれないのだ。
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