今変わるべき霞が関──「雑務」が日本を滅ぼす前に:沢渡あまねの「脱アナログ庁」(2/2 ページ)
印刷、押印、製本、郵送、書留、FAXなど──とにかく雑務が多い日本。政府が「働き方改革」「DX」を掲げているにもかかわらず、霞が関内部にはガラパゴス化した理不尽な働き方がはびこっている。霞が関は変わることができるのだろうか? 具体的には、何から取り組むべきなのだろうか? 多くの企業や自治体、官公庁で業務改善支援を行ってきた沢渡あまね氏が考察する。
ビジョンはどこに? “一枚岩”になれない組織
インターナルブランディング(またはインナーブランディング)なる言葉をご存じであろうか。企業が社員など、組織の「中の人」に対してビジョンやミッションを浸透させ、同じ方向を向いて導く動機づけの取り組みである。
この国は、政府や中央省庁など、国を運営する「中の人」に対するブランディング、すなわち国としてのインターナルブランディングが壊滅的に弱い。
「働き方改革」「一億総活躍」「DX」……。これらは国としてのビジョンかつ重点施策ではなかったのか? にもかかかわらず、個別最適で各省庁が無駄な間接業務やタダ働き同然の事務作業をなくさなかったりする。デジタルで代替できる、あるいはなくせるものをなくそうとしない。むしろ無駄なタダ働き作業を増やそうとする。
「この業務プロセスは、あなたたちのお上がビジョンとして掲げている『働き方改革』『DX』に逆行すると思うのですが、どうお考えでしょうか?」──そう問い詰めても、「それはそれ、これはこれ」で逃げようとする。
政府も中央省庁も行政も企業も、まるで一枚岩になっていないのだ。これでは改革も変革もうまくいくはずがない。縦割り組織、縦割りカルチャー、個別最適マインド、「言われたことだけは従順」な人々、ルールに従順すぎる組織カルチャー。こうした負の側面の寄り集まった結果なのである。
では、どうしたらいい?
とにもかくにも、この国は雑務や事務作業が多すぎる。
強制力を持ったリーダーシップと現場からのボトムアップの両面で、事務作業や間接業務を撲滅する──そのくらいの覚悟で、今までのルールや慣習を変えていかないと、この国はヤバい。プロが育たない、イノベーションが起こらない、生産性もGDPも上がらない状態がますます加速する。
- デザイン思考を取り入れる
- 技術系人材を登用し、テクノロジーで代替/なくす方法を実現する
- 複業人材の登用し、多様な意見や観点を取り入れる
あらゆる手段で、事務作業大国日本、タダ働き大国日本から脱していかねばならない。
「次世代にツケを残さない」と政府が発信する、その姿勢は素晴らしい。しかし、その次に出てくる言葉は「増税」「社会保険料の引き上げ」など何かとお金を取ることばかりである。
はぁ? その前にやることがあるでしょう。
無駄な事務作業や間接業務をなくす。ルールを変えてタダ働きをなくす。それも「次世代にツケを残さない」大事な取り組みであり、オトナの責任ではないだろうか。
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