ECショップ開設、どこまで簡単にできる? 「65歳の母でも使えるシステム」目指して:Japan IT Week 秋
「飲食店を営んでいる65歳の母親から、ネットでも販売したいという相談を受けた」と話すのは、WIREBASE代表取締役CEO、中村伸志さんだ。母の願いを受け、中村さんは「ネコカートショップ」を開発した。どのようなサービスなのか?
コロナ禍を受けて、店舗が「対面以外で売り上げを立てる方法」を考える必要性が高まったといえるだろう。
とはいえ、対面での客商売を行ってきた店舗オーナーがインターネットを通じてモノを売ろうとする場合、踏むべき手順に戸惑いがちだ。「写メを送るように簡単に立ち上げられればいいのに」──そんなニーズに応えるサービスが、10月27〜29日にかけて行われた「第12回 Japan IT Week 秋」内で展示されていた。
「65歳の母でも使えるシステム」目指して
「飲食店を営んでいる65歳の母親から、ネットでも販売したいという相談を受けた」と話すのはWIREBASE(東京都渋谷区)代表取締役CEO、中村伸志さんだ。
「足を運んでくれるお客さんが減ったことから、他店舗でも行っている“通販”を行いたいと思ったものの、既存のネットショップ開設ツールでは難しい」と母親に言われた中村さんは、自ら「ネコカートショップ」を開発した。
ネコカートショップは、ショップ名、商品名、商品写真、価格、配送方法、選択可能な決済方法など、最低限必要な情報を入力していくだけで商品を登録、販売できるシステムだ。
世の中には「簡単に開設できる」とうたうEC開設ツールが多数、登場している。これらの多くは、Webページ制作の知識があったり、デジタルに慣れていて操作方法が感覚的に分かったりするような人であれば難なく扱えるが、PCにほとんど触ることなく生活してきた人だとハードルが高い。ネットショップを立ち上げるのに、書店でハウツー本を買う必要さえあるかもしれない。
一方、中村さんの母からの要望で作られたネコカートショップは、そうしたECショップ開設のハードルを下げ、どんな人でも扱えるように意識して作られている。
作成手順を目の前で見せてもらったところ、あっという間に商品の登録されたショップサイトが完成した。キーボード操作に慣れていない人を想定し、入力するテキストは最低限にしているという。ショップ開設から、商品登録などの運用まで容易に行える。
決済方法は、ユーザーが契約しているVISAなどのクレジットカード、PayPayなどのスマホ決済、その他さまざまなものに対応。ショップを開設したら、リンクをSNSにシェアし、そこから集客や販売につなげる。
ターゲットは、これまで対面で接客を行ってきた小規模な店舗オーナーだ。そのため、初期手数料や月額料金は無料。売り上げの4.1%を手数料として徴収することでマネタイズしていく。
現在は、PC操作の苦手な母親に使い勝手を聞きながらUIを改良中で、2022年3月にリリースする予定だという。
なお、サービス名を「ネコカートショップ」にした理由は、「ネコが好きなことと、商売繁盛の招き猫にひっかけて」とのこと。売れるものがあるのに、店舗以外に販売手段を持たないという事業者にとって、招き猫的サービスになれるだろうか。
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