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「やけくそ」でつくった切り餅調理機が大ヒット 洗車機トップシェア企業の個性的な開発方針とは:家電メーカー進化論(2/6 ページ)
エムケー精工は、ちょっと変わった個性派家電を数多く手がけるメーカー。創業は1956年で取り扱う商品の幅は非常に広く、門型洗車機は業界トップシェア。さらに食品加工機や断熱建具なども手掛ける。さまざまな事業を展開するエムケー精工が個性派家電を生み出し続けられる背景について丸山将一社長に聞いた。
石油ポンプの製造がルーツ
エムケー精工は丸山氏の祖父にあたる丸山盛永氏が1948年に設立した丸山工業有限会社がルーツとなる。最初に手がけていたのは、りんごの袋をとめる金具や瓶の王冠といった金物などだという。そして、ストーブに灯油を移す給油ポンプが大ヒットし、街の金物屋のネットワークを通じて日本全国で販売したことで急成長した。
「当時、街の金物屋さんは地域に根差した商売をしていました。その関係で、調理雑貨や計量米びつ、収納庫といった具合に取り扱う商品が広がっていきました。また、地域の金物屋さんはガソリンスタンドを経営していることも多く、その流れで洗車機を始めとする自動車関連機器も製造するようになり、製品が広がっていきました」(丸山氏)
給油ポンプをきっかけに始まった日本全国の金物屋との取引。これを起点にB to Cを進めたのが家電を始めとする生活関連商品であり、B to Bに進めたのが、自動車関連機器だという。
ガソリンスタンドに門型洗車機を納入する中で、ガソリン価格を表示する看板やLED表示灯の製造も依頼され、自動車関連のビジネスは横に広がっていった。
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