元バイトAKBのラーメン店、産地偽装は返金で許されるのか?:専門家のイロメガネ(2/4 ページ)
先日、元バイトAKBの梅澤愛優香さんが経営するラーメン店「麺匠 八雲」で食材の産地偽装があったと報じられた。今回のトラブルは経営者の個人的な炎上のように捉えられているが、それらの要素を取り除けばコンプライアンスやガバナンスの問題にいきつく。
客は泣き寝入り?
前述の通り、産地偽装について店主の梅澤さんはミスであると説明している。とはいえ食材のこだわりをウリにしていたにもかかわらず、例えば国産天然海老は、スーパーで仕入れたインドネシア産の海老を使っていたという(他にも複数の産地偽装を認めている)。
これでは説明と異なる安価な食材で利益を増やそうとしていたのでは? 意図的な偽装ではないのか? と疑われてもおかしくない状況だ。
海老を利用したメニューは公式サイトを確認すると、1000円の海老ワンタンメンと1200円の八雲特製ラーメンの2つ。ラーメンの価格として決して安くはない。顧客の期待を裏切る行為であることは間違いない。
公式サイトやSNSでは、産地偽装の状態だった2019年8月〜21年10月の2年2か月分と長期間にわたる飲食代金を返金すると公表している。これはお店が潰れかねないほどの負担になると思われるが、その一方で返金をすればそれでいいのか? 産地偽装はそんなに軽いのか? と疑問を感じた人もいるかもしれない。
偽装表示を行った店舗はどのような法的請求を受けるのか。
例えば松坂牛のステーキと表示しているメニューが、実は輸入肉だったことが判明したとしよう。明らかに商品の表記にウソがあった場合、客は店を相手取って損害賠償の請求ができるはずだが、損害賠償のハードルはかなり高い。
健康被害が発生するようなケースであれば、治療費や慰謝料も発生して高額になる可能性はある。そういった被害がなければ元々の代金自体が少額で、店側がすんなり賠償に応じない場合は裁判をするにしても、必要なコストと得られるメリットがあまりにアンバランスで割に合わない。
筆者は消費者トラブルを業務で扱うが、被害額が少ない場合は報酬も考慮するとほとんどお金が残らないかむしろ損をしてしまう。一定額以上でなければ専門家が関与しにくいのが現状だ。
今回のケースは返金に応じると明言されているが、そうでない場合はある程度の金額や被害の大きさがなければ泣き寝入りになりかねない。
冒頭に書いた通り、一杯数百円から1000円程度のラーメンで産地偽装のトラブルが起きれば、少額であることが原因で店側のやったもの勝ちになってしまう可能性がある。ただ、そうならないための制度が景品表示法だ。
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