デジタル化で生まれた好循環 「アンダーアーマー」ドーム社が目指すオンラインとオフラインの融合:顧客に合わせた最適なコミュニケーションを(1/3 ページ)
コロナ禍でリアル店舗が大打撃を被る中、「第二の創業期」を掲げ、デジタル化を基に顧客コミュニケーションを刷新しているドーム社。好循環を生み出しながら、ブランドの再定義に挑む同社の担当者に話を聞いた。
コロナ禍を経験した小売、流通業界に大きな変革が起こっている。新型コロナウイルスの感染拡大により、リアル店舗の集客力が低下したことで、デジタルを活用した販売手法の確立を急激に迫られたのだ。ワクチン接種などにより感染者数がやや一服しつつある今、この時期をどのように過ごしてきたのかによって、業績の差が如実に表れ始めている。デジタル活用の一手を打てた企業は、単なる「コロナ対策」にとどまらず、顧客データに基づいた新しい小売の戦い方を手に入れることになったといえるだろう。
米スポーツアパレルブランド「アンダーアーマー」の日本総代理店であるドーム社も、新たな戦略を武器に、激変期を戦い抜こうとしている企業の一つだ。そこで今回は、同社のコンシューマーマーケティング部マーケティングアナリティクスチームに所属する間瀬有紀氏にインタビューし、同社のデジタルシフトに関する取り組みについて聞いた。
課題だった「ブランドの希薄化」
日本におけるアンダーアーマーブランドの総代理店として20年以上にわたり、国内販売を手掛けてきたドーム社。アスリートのパフォーマンスを引き上げる“パフォーマンスアパレル”という新しいジャンルを確立し、これまで多くのアスリートを中心に商品を提供してきた。
その一方、急成長を遂げてきたがゆえの課題も抱えていた。さまざまな商品を展開する中で、ブランドが消費者に与える価値観がぼやけてしまっていたのだ。
「これまでは、『広く商品をお届けする』という点に注力し、ライフスタイル商品や靴など、いわゆる普段使いのアイテムを増やす傾向にありました。その中で、アンダーアーマーというブランドが提供する価値が何なのか、という点があいまいになってしまっていたのです。
われわれが提供するのはあくまで『アスリートがパフォーマンスを高めるためのアイテム』です。この点に立ち返り、向上心のある人に向けた、機能性の高いアイテムを提供するブランドだというメッセージを届けられるように販売戦略や顧客コミュニケーションを見直しました」
そこで、ブランドの再定義を図るため、「第二の創業期」と銘打ち、新たなチャレンジを試み始める。その矢先、コロナ禍に見舞われ、全体の5割を占めていたリアル店舗における売り上げを直撃することに。直営店でアイテムの価値やブランドの意義を体験してもらい、その後オンラインで購入してもらう――という流れを想定していたところ、店舗体験の提供が難しくなったのだ。そこで同社が考えたのが、デジタルの特性を生かしたメッセージングだった。
「これまでのリアル店舗を起点としたものから、Webサイトやアプリ上でコミュニケーションをとってブランド体験を提供する方向へと舵を切りました。トレーニング動画やアスリートのオンラインイベントといったコンテンツを増強し、SNSでもキャンペーンを実施することで、お客さまとのコミュニケーション量を増やすことに注力しました」(間瀬氏)
デジタル化したがゆえに生まれた悩みとは
これまでにないデジタルを活用したコミュニケーションを押し進めたが、課題もあった。
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