デジタル化で生まれた好循環 「アンダーアーマー」ドーム社が目指すオンラインとオフラインの融合:顧客に合わせた最適なコミュニケーションを(2/3 ページ)
コロナ禍でリアル店舗が大打撃を被る中、「第二の創業期」を掲げ、デジタル化を基に顧客コミュニケーションを刷新しているドーム社。好循環を生み出しながら、ブランドの再定義に挑む同社の担当者に話を聞いた。
同社が展開し、大きな売り上げを生み出していたアウトレットショップやシークレットセールといったオフラインの販路を利用していた顧客に訴求できなかったのだ。
この背景には、同一のブランドでありながら、チャネルごとに違った顧客コミュニケーションを行っており、一本筋の通った施策を打ち出せていなかったこともある。ECを担当する部署、あるいはブランド全体のマーケティングを行っている部署などで、顧客に発するメッセージがばらばらになってしまっていたのだ。
「そこで、ブランド全体、EC、直営店といったそれぞれの部署にあったマーケティングチームを一元化し、オンライン・オフラインにかかわらずチャネルを横断した施策を考える組織をつくりました。
その上で、オフラインで買い物をしたお客さまに対して、アプリ上のバーコードを提示することで割り引くキャンペーンなどを実施し、オフラインからオンラインへの導線もつくるようにしました」(間瀬氏)
組織改編による顧客コミュニケーションだけでなく、チャネルごとにバラバラに保有していた顧客データも統合した。「どのチャネルで利用した人に対しても同じ体験を提供したい、その人にとって最も身近なブランドでありたい」という思いから、ブランドとして一貫性のあるメッセージをベースに、購入履歴に基づいたレコメンドメールを配信し、顧客にとって最適な商品が一覧で並ぶページも用意したという。
デジタルの無理強いはしない 顧客ごとに最適なコミュニケーションを
こうしたデジタル中心の取り組みを進めているものの、オフラインの顧客をオンラインに無理やり連れてくるようなことはしないのが、ドーム社の取り組みの特長だ。
「アスリートの中には着心地や機能性に対するこだわりが強く、実際に目で見て触って決めたいという方もいる」(間瀬氏)からだと説明する。あくまで同社が追求するのは、「どこでも便利に購入できる利便性」ではなく、「良い体験をしてもらいたい」という価値であり、ブランドが発信するストーリーが好きというファンの醸成だからこそ、こうしたポリシーを貫いている。「そのために、データに基づいた最適なコミュニケーションをお客さまごとにとっていきたいと考えています」と間瀬氏は話す。
デジタルシフトにより生まれた「好循環」
顧客データを活用したマーケティング施策を実施するようになって、オフラインスタッフの意識が変わり、売り上げの面でも効果が出始めている。
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