【前編】TOMA×Sansan対談で学ぶ 迫る改正電帳法、残り1カ月で「するべきこと」「できること」とは?:対談で学ぶ電帳法とインボイス(4/4 ページ)
施行まであと1カ月となった改正電子帳簿保存法。要件が緩和され、大企業だけではなく中小企業も対応しやうい環境がようやく整ったが、実際はまだ準備が十分に進んでいないという現場も少なくないのではないだろうか? 電子取引が義務化されたことで、「うちには関係ない」とはいえない状況となった今、少ない時間でどのように準備を進めるべきなのか?
Sansan 柴野:こういった問題は、整備後に丸投げすることで、社員間のリレーションが終わってしまうために起こります。電帳法の真実性とか検索性とか言われても、運用側は分かりませんよね。少し面倒でも、「やることを絞ってあげる」のが運用に乗せるポイントです。
そもそも暫定対応の対象となるのは、「電子で受け取った請求書や見積書」です。該当書類を「電子でもらったのか『紙』でもらったのか」を知っているのは、もらった本人だけですよね。印刷して渡されたら、経理には判別できません。
TOMA 持木:そこでまず、棚卸なんですよね。電子なのか紙なのか、「何で受領してるか」を含めて棚卸をして一覧表を作り、それを基にしてどういうフローを構築するか方針を固める。
Sansan 柴野:はい、そこの入り口だけしっかり整えて、あとは「電子でもらった請求書はこのフォルダに入れる」だけの人たち、「フォルダ内にファイルがあるかチェックする」だけの人たち……というようにステップで役割を切ってあげればヌケモレも防げますし、運用にも乗りやすいと思います。正直人手が必要な作業ではありますが、そこは暫定対応なのできちんと整備した上で乗り切っていただきたいですね。
――SansanのBill Oneでは、「紙」の請求書業務に関しても代理で受け取りスキャンをしているということですが、暫定から本対応へ移行するにあたって、こういったBPO対策も検討するべきでしょうか?
TOMA 持木:まさしくそうですね。スキャナ保存については、テレワークを継続する以上「誰が出社してスキャンするのか」といった課題は解消されません。Bill Oneでは、郵送された「紙」の請求書を代理で受け取り、代理でスキャンをし、全請求書をクラウド上で一元管理できます。非常にメリットのあるソリューションだということで、当社でも率先して導入しました。
Sansan 柴野:ありがとうございます(笑)。Bill Oneでは、「Bill Oneセンター」という請求書の代理受領センターを設けています。「紙」の請求書は、取引先からBill Oneセンターに郵送してもらうことで、受領もスキャンも代行します。
持木さんのお話にもあったように、請求書の授受は自社だけの問題ではなく、電子で送ってほしい、「紙」で送ってほしいという現場の都合が通らないことが、一元管理の妨げになります。当社では代理事業まで踏み込んで支援することで、受領企業からすると一元管理が実現でき、発行企業からしても「Bill Oneセンターに送ればいい」だけなので従来の業務を変える負担がない――そんな世界を実現できればと考えています。
TOMA 持木:スキャナ保存に関しては、工数が増えることにハードルの高さを感じて対応を断念する企業も少なくありません。しかし、23年にはインボイス制度も控えているので、そうも言っていられない。暫定対応をしながら、インボイス制度が始まる前までにBill Oneのようなソリューション導入をして、受領発行ともに電子化していく。このようなスキームで、電帳法への本対応準備を進めていただきたいですね。
持木健太氏
TOMA税理士法人 ITコンサル部部長
中小企業診断士
立教大学理学部物理学科卒業。DX推進の総責任者として、テレワーク環境構築・ペーパーレス化・電子帳簿保存法対応・ビジネスモデルの再構築などで活躍中。企業の労働生産性向上や付加価値向上を目指して、中小企業から上場企業まで幅広く対応している。
柴野亮氏
Bill One Unit プロダクトマーケティングマネジャー/公認会計士
前職のPwCあらた有限責任監査法人では、上場企業や外資系の会計監査、内部統制監査に従事。2014年にSansan株式会社へ入社。財務経理として、経理実務、資金調達、上場準備業務に従事。その後、請求書がもたらす会社全体の生産性低下を解決するために、クラウド請求書受領サービス「Bill One」を起案し、現在プロダクトマーケティングマネジャーを務める。
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