【前編】TOMA×Sansan対談で学ぶ 迫る改正電帳法、残り1カ月で「するべきこと」「できること」とは?:対談で学ぶ電帳法とインボイス(3/4 ページ)
施行まであと1カ月となった改正電子帳簿保存法。要件が緩和され、大企業だけではなく中小企業も対応しやうい環境がようやく整ったが、実際はまだ準備が十分に進んでいないという現場も少なくないのではないだろうか? 電子取引が義務化されたことで、「うちには関係ない」とはいえない状況となった今、少ない時間でどのように準備を進めるべきなのか?
TOMA 持木:今、急務とされるのは義務化された電子取引への対応ですが、これに関してはPDFのファイル名に取引金額、年月日、取引先を入れて、指定のフォルダに保存。または、表計算ソフトを使って一覧表にまとめて、連番をファイル名につけることで検索要件に対応すればいい。訂正削除要件は、事務処理規程を備え付けて対応します。これが暫定対応です。
「22年1月の改正電帳法に間に合わない」と考えている企業であっても、この方法ならとりあえずは対応できます。ただし、「あくまで暫定である」ことを念頭に置いて、並行して業務フローの変更を進めていただきたい。
Sansan 柴野:「時間がないから、やむを得ず暫定対応するだけ」であって、最終保存形態ではないということですよね。
TOMA 持木:そうです。こんなことずっと続けたら、生産性がどんどん下がります。効率化を目指す法律に縛られて、生産性が落ちてしまっては本末転倒です。
Sansan 柴野:ペーパーレスとかテレワークって、実は昔から推奨されていたと思うんです。誰かが週1回出社して、必要書類をスキャンして各担当に配るとか、その上でファイル名に「部長承認済み」などと入れ、フェーズごとにフォルダ管理して運用する――みたいなことを実際に行っていた企業も複数知っていますが、みなさん共通して「現場が崩壊した」と話すんですよね。
電帳法における「暫定対応」もそれと同じで、続けていたら現場が疲弊するだけ。「結局紙のままがよかった」なんて話になってしまう。そもそも、PDFにしてフォルダ管理するだけではデータ活用に結びつきません。
――「暫定対応」の期限は切るべきでしょうか?
TOMA 持木:企業規模によるとしか言えないでしょうね。業務フローの変更に3カ月かかる場合もあれば、1年は必要な場合もある。そこを見極めるためにも、残り1カ月で「できること」はアナログな暫定対応……なんですが、「するべきこと」はまず業務の棚卸、そして電帳法を長い目で見て業務フローの変更を進めていくことでしょう。
Sansan 柴野:そういう意味でも、僕はスタート時に重要なのは「小さく回すこと」だと考えていて。先ほど持木さんがおっしゃっていたように、部署ごとに業務フローがあり、「なぜその業務フローなのか」には事情があるはずです。何かのシステムを新たに入れて一律で回すのは難しい。
TOMA 持木:効率的に進めていくためにも、できるところから着手することは確かに重要ですね。
Sansan 柴野:はい。一気にドンと進めるのでは混乱しますし、教育コストもかかります。「この部署でうまくいったら、じゃあ次はこっちの部署に広げてみよう」といった、検証を兼ねたミニマムスタートは電帳法対応のポイントではないでしょうか。ステップがしっかり見えるので、周りも納得しやすい。
――「暫定対応」含め、電帳法対応はどの部署が先導するべきですか?
TOMA 持木:経理と情報システム部門、両方が協力しないと成立しないのが、この法対応なんですよね。私としては、専門チームを立ち上げることをおすすめします。
Sansan 柴野:そうですね、運用に乗せるまで面倒を見るチームは必要だと思います。僕は業務フローの変更は「整備」と「運用」の大きく2つに分かれると思うんです。整備は「川を流す幅を作る」ことです。こういうステップで、あなたの部署ではこうしてくださいというルール作りをする。そしてそのルールに従って「水を流す」、業務を行う運用へ移る。
しかし、ちゃんと整備しました、ルール決めました、あとは運用してくださいと投げたところで、運用に乗らない。特に暫定対応では、こういった問題が今後出てくるだろうなと思ってます。
――どうすればいいのでしょうか?
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