楽天経済圏での仮想通貨の可能性 楽天ウォレット、山田社長に聞く:金融ディスラプション(4/4 ページ)
楽天グループの仮想通貨取引所「楽天ウォレット」。現在、楽天ペイメントの傘下にあり、楽天キャッシュとの連動など、楽天グループとしてのシナジーを追求している。大手企業のグループ会社として、仮想通貨の現状をどう見ているのか。山田達也社長に聞いた。
「楽天ウォレット」という社名に込めた思い
「楽天ビットコイン」ではなく「楽天ウォレット」という社名だ。ウォレットという社名に込められた思いは?
山田氏 ウォレットは、暗号資産でいう預かる口座という意味合いがある。資産をしっかり安心して預けられる口座でありたいという思いだ。ステーブルコインはじめ、デジタル資産の管理を安心して任せられるようなウォレット、支払いや決済でも使ってもらえるウォレットを目指す。
預かった法定通貨については、信託保全を業界に先駆けて実装した。これはグループの楽天信託が協力したもので、FXの仕組みを応用して、楽天信託で法定通貨を保全する。
暗号資産のカストディ(保管管理業務)については、信託で保全されるのが安全だと考えているが、なかなか暗号資産のカストディを進められない。国内では信託銀行がカストディになるというのはハードルが高い。信託会社は可能性があるが、信託会社がそこまで意識が及んでいない。
安心して暗号資産を預けられるカストディは必要だと思っている。日本がそこで遅れると、海外カストディを使うことになってしまう。機関投資家が暗号資産を取り引きするとなると、海外を使わざるを得ないのが現状だ。
暗号資産取引所として、どんな点を強みとし、どのようなビジネスを展開しようとしているのか。
山田氏 楽天グループの一員として、楽天経済圏での暗号資産の可能性を広げていく。いろいろなサービスとの連携、楽天ポイントから暗号資産に替えられる、暗号資産から楽天キャッシュにチャージできるなどに取り組んでいる。
税制の問題もあるが、ご理解いただけるお客さまが使ってくれている。徐々には浸透してきている。7月から、アプリの中で運用状況が一目で分かるサービスを実装して好評いただいている。税計算も、1年間でどのくらいの確定利益があったのかを一目で分かるような画面も用意している。
決済に近いところやステーブルコインを通じたビジネスができればいいとは思うが、まずは楽天会員にどんな暗号資産サービスを提供できるかを考えていく。
また、投資家向けのサービスもしっかり提供していきたい。証券取引やFX取引を行っているユーザーのニーズには応えていく。安心して取り引きできる環境を整える、そして楽天経済圏への連携を強めていく。
山田社長にとって、仮想通貨とは何か?
山田氏 この仕事を始めるときに思い描いていたのは、新しい金融サービスの可能性を広げるものだということ。まずはアセットクラスとしての立ち位置だ。資産形成に役立ってもらえる対象として、証拠金取引、デリバティブが大きく成長していくだろう。
そしてデジタル通貨ということもあって、国境をまたぐような支払いの決済に使われることに期待感を持っている。海外送金用途としては、現物が対象になる。国内に多く住んでいる外国人の方、海外に行ったときに日本人が決済できる。その環境を作っていく。
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