楽天経済圏での仮想通貨の可能性 楽天ウォレット、山田社長に聞く:金融ディスラプション(3/4 ページ)
楽天グループの仮想通貨取引所「楽天ウォレット」。現在、楽天ペイメントの傘下にあり、楽天キャッシュとの連動など、楽天グループとしてのシナジーを追求している。大手企業のグループ会社として、仮想通貨の現状をどう見ているのか。山田達也社長に聞いた。
身近なアセットクラスになれば国も動く
仮想通貨の決済利用においては、税制も課題だ。株式のような分離課税になっておらず、高率な累進課税だという点が問題として指摘される。
山田氏 税制の壁はある。為替の証拠金取引(FX)でも、そういう経緯があり、解決には10年くらいかかった。そのときは、個人の資産形成において、FXマーケットが成熟してきているという判断で、改革が行われたという背景がある。より身近なアセットクラスとして認知が進んで、多くの投資家の声が出てくれば、税制改革の後押しになるのではないか。
暗号資産取引には現物と証拠金取引がある。証拠金取引は、ほかの差金決済と同じ仕組の取り引きだ。そういったものについては、ほかの金融取引と同じ税制になってくれないかと思っている。意見書は各団体、日本暗号資産ビジネス協会、FIAジャパン、新経済連盟などから政府への提言として出されている。
DeFi、NFT、STOなど、仮想通貨に関連したサービスが世界で広がりつつある。
山田氏 DeFiは、既存の金融機関の基盤に対して、非中央集権の形で独自のプログラムで動くものだ。リスクが個人では分からないものなので、なかなか個人がDeFiを利用するのは厳しい。しっかりとリスクについて表記され投資家が成熟することで広がっていくのではないか。
NFTは、楽天グループでも今後進めていくというアナウンスはしている。楽天ウォレットとしては、NFTを拡大する際に、セカンダリー市場や顧客に紹介していくことも考えられる。
STOについては、既存の証券会社が進めている。楽天においても、取り組む際は金融グループでリードしていくのではないか。
こうした先端領域では、日本は海外に比べ遅れているという指摘もある。
山田氏 日本ではしっかりしたルールが世界に先駆けて作られて、どこよりも安心して受けられるサービスが提供されている。規制イコール悪いというよりも、規制をしっかり守ることで、安心したサービスの提供、サービスを受けられることにつながる。
海外の、ルールがないところで取り引きを行うのは、投資家保護の観点でも十分ではなかったり、FATF(金融活動作業部会)が求めるAML(アンチマネーロンダリング)対応が整っていなかったりといった問題がある。先進的な金融をサービスする上で、世界的にもAMLについては目を光らせている。健全に育っていくために必要なルールかと思う。
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