2015年7月27日以前の記事
検索
ニュース

50代は本当にお荷物か? “働かないおじさん”問題に悩む企業の勘違い河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(2/3 ページ)

リモート勤務やジョブ型雇用、希望退職などが注目されるたび、話題になるのが「働かないおじさん」問題だ。50代など、ある一定の年齢になるだけで仕事の能力が低下するわけではないのに、なぜいつも話題になるのかというと──。

Share
Tweet
LINE
Hatena
-

 念のため断っておきますが、私は「働かない会社員」を擁護するつもりは1ミリもありません。

 しかし、年を取るほど、若い社員よりも能力が低く、新しいことへの適応力が劣り、仕事に取り組む意欲が乏しくなる、と思われていることが残念で仕方がないのです。だって、若いからといって仕事ができるわけでも、創造力が高いわけでもないのですから。

 これぞ「無意識バイアス」。そう、無意識バイアスによる年齢差別です。

 繰り返しますが、確かにそういう“困ったおじさん”もいます。が、全ての50代がそういうわけじゃない。

 女性差別、男性差別などのジェンダーバイアスや性差別と同様に、年齢への無意識バイアスがはびこっているだけです。しかも、厄介なのは、無意識バイアスが作り出す世間の「まなざし」により、本人自身が「私は会社に不利益をもたらすかもしれない」と気後れする心の動きが存在する。

 自分の能力を低めに評価したり、意見するのを恐れたり、「若い人の意見には口出さない方がいい」「自分たちの時代とは違うからね」などの言葉で、自らを「非戦力化」したりしてしまうのです。

 フランスの哲学者、ジャン=ポール・サルトルは、社会におけるまなざしを「regard」と名付け、「人間は気付いたときにはすでに、常に状況に拘束されている。他者のまなざしは、 私を対自から即自存在に変じさせる。地獄とは他人である」と説きました。

 他人の「まなざし」は想像以上に私たちをおとしめます。

 「働かないおじさん」と冷やかされるベテラン社員の中には、本来であれば「もっと活躍できる人」もいるのに、50代をお荷物扱いする世間の「まなざし」により、正真正銘の「働かないおじさん」が量産されている可能性が極めて高い、と私は考えているのです。

 実際、先日人事コンサルティングのフォー・ノーツ(東京都港区)が公表した「50代社員に関する意識調査」でもその傾向が認められています。

 「あなたの職場にいる身近な50代の社員は、今後新たなスキルや知識を身につけたり、未経験の仕事に取り組むことができると思いますか」との問いに、50代が遠慮がちに答えていることを伺わせる結果が出ていました。

 20代の53%が「若い社員と同様にできる」と答えたのに対し、50代では38%と15ポイント低くなっていました。一方、50代の49%が「若い社員には劣るができる」と答え、20代の30%と比べ、19ポイントほど高い結果でした。


50代社員が新たな知識・スキルを身につけ、未経験の仕事に取り組めると思うか 「50代社員に関する意識調査」より

 また、「あなたの職場にいる身近な50代の社員に、期待する能力はどのような点ですか?」という質問には、50代の5人に1人(22%)が「特にない」と否定的に答えたのに対し、20〜40代は、ベテラン社員の経験に期待する回答が目立っていました。


50代社員に期待する能力 「50代社員に関する意識調査」より

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ページトップに戻る