LINEミニアプリにスカウター? パルコ・H2OリテイリングのDXリーダーが語る、物があふれた時代の百貨店:長谷川秀樹の「IT酒場放浪記」 “百貨店の未来”編(1/5 ページ)
元メルカリCIO長谷川秀樹氏が、IT改革者と語る「IT酒場放浪記」。今回のゲストは、パルコ執行役員の林直孝氏と、エイチ・ツー・オー リテイリング執行役員の小山徹氏。DXを率いるリーダーとして、両者が今考える「百貨店の未来」とは──。
連載:長谷川秀樹の「IT酒場放浪記」
東急ハンズCIO・メルカリCIOなどを務め、現在は独立してプロフェッショナルCDO(最高デジタル責任者)の道を進む長谷川秀樹氏が、個性豊かな“改革者”をゲストに酒を酌み交わしながら語り合う対談企画。執筆はITライター・ノンフィクション作家の酒井真弓。
プロフェッショナルCDO(最高デジタル責任者)の長谷川秀樹氏が、改革者と語り合う本対談。今回のゲストは、パルコ執行役員、林直孝氏と、阪急阪神東宝グループで、阪急阪神百貨店やイズミヤなどを傘下にもつエイチ・ツー・オー リテイリング執行役員、小山徹氏。
林氏は、新卒でパルコに入社し、今年で30年目を迎える。30年もいれば何度か「もう辞めてやらぁ」と思ったことはあったそうだ。それでも結果的にパルコ一筋を貫いたのは、上司から部下への権限移譲が早く、趣味の延長線上でさまざまな企画・事業に挑戦できたからだという。入社2年目のときには、バルセロナ五輪を機に日本でも盛り上がり始めたバスケットボールに目をつけ、会社を飛び出し、関係者や後援者を巻き込んで、渋谷パルコ近くの駐車場で3on3大会を開催した。
対して小山氏は、日本IBM、ファイザー、PwCなど、業界を超えた転職をしながらキャリアを積んできた。2014年、三越伊勢丹ホールディングスで顧問 兼 三越伊勢丹システム・ソリューションズ代表取締役として構造改革を推進中に、林氏や長谷川氏と出会った。20年に独立し、現在は複業家としてリテールを中心に活動している。
対照的なキャリアでありながら、それぞれDXを率いるリーダーとしてショッピングセンターや百貨店の革新を担っている林氏と小山氏。両者が今考える、百貨店ビジネスの課題、新たな顧客接点の創出、そして、これからの接客の形とは。
20代は振り向くか? 百貨店ビジネスの現在地
長谷川: 今の20代、30代に、百貨店で物を買いたいと思わせることはできるかな?
小山: 昭和の時代、お客さまは新しい発見、新しい体験を求め、「百貨店に行けば何かあるかも」と期待を寄せていてくれました。でも、今の20代、30代、そして、生まれたときからスマホがあるデジタルネイティブ世代に同じやり方は響きません。まず、お店に来ない。「ネットで買えちゃうのに百貨店って何であるの?」という感覚ですね。
事実、百貨店業界の売上規模は10兆円から半分まで縮小しています。10年後に若者が使うものがまだスマホかどうかは分かりませんが、少なくともデジタルが後退してリアルに回帰することはありません。今まで以上に価値がないと、リアル店舗にお客さまは集まらないと思います。
関連記事
- DXとは「すっ飛ばす」こと DXが進まない企業に欠けている視点
DXは間違いなく、現在ビジネスにおけるトレンドワードだ。しかし、その本質を理解している人はどれだけいるだろうか。本記事では350以上の企業などで組織・業務改革支援の経験を持つ沢渡あまね氏が、単なる“デジタル化”では成し得ない、“DXの本質”について解説する。 - “買いすぎ防止”スマホレジを導入したら、客単価が20%上昇 イオン「レジゴー」の秘密に迫る
イオンのレジに革命が起きている。買い物客が貸し出し用のスマートフォンを使い、かごに入れる前に商品をスキャン、専用レジで会計する「レジゴー」だ。スキャンにかかる時間は約1秒。レジでは決済のみを行うため、レジ待ちの渋滞も起きづらい。常に商品の一覧と合計金額が確認でき、利用者にとっては買い過ぎの防止にもなるレジゴーの導入で、客単価が向上したという。その理由を聞いた。 - デジタル時代でも、感動を与えるのは店舗──中川政七商店、ユナイテッドアローズのCDOが語る哲学
元メルカリCIO長谷川秀樹氏が、IT改革者と語る「IT酒場放浪記」。今回のゲストは、中川政七商店 取締役CDOの緒方恵氏と、ユナイテッドアローズ 執行役員CDOの藤原義昭氏。小売り企業のDXを最前線で進めてきた二人が、今あらためて考える店舗の価値、ECの意義とは? - パナソニック新CIO、玉置氏を導いた思想 「CIOは経営者」「話を聞いてもらうために偉くなる」
元メルカリCIO長谷川秀樹氏が、IT改革者と語る「IT酒場放浪記」。今回のゲストは、P&G、ファーストリテイリング、アクサ生命保険でCIOを務め、5月にパナソニックのCIOに就任した玉置肇氏。大学時代はサルの研究者を目指していたという玉置氏が、CIOの道を歩み始めたきっかけは、何だったのか。そして、今考える「CIOのあるべき姿」とは。 - 崩壊寸前だったVoicy 離職率67%→9%に立て直した人事責任者が語る“人事の本質”
日本の音声コンテンツ市場の先頭を走る、音声メディア「Voicy」。3カ月で利用者数が2.5倍になるなど、コロナ禍で驚異的に成長している。しかし、たった1年半前は離職率が67%にのぼり、組織崩壊寸前だったという。そんな中でVoicyに入社し、抜本的な人事改革を行ったという勝村氏。一体どのような改革を行ったのか──?
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.