無人販売のキモは? シャポー船橋でパンを販売して、分かってきたこと:「実証実験」の結果(5/5 ページ)
無人販売が増えてきた。冷凍ギョーザや古着などを販売しているわけだが、筆者が気になっていることが一つある。いずれも店舗を構えていて、そこで商品を販売していることだ。商業施設の中で無人販売をしているところがないのか調べたところ……。
「できるだけ買いやすくする」こと
感染がやや落ち着いたタイミングを狙って、どんな取り組みをしたのだろうか。アプリを使って事前に注文した商品を特設カウンターで受け取れるようにしたり、ロッカーで受け取ることができるようにしたり。このほかにもアプリを使えばケースのカギが開き、その中から商品を取り出すと決済ができるようにしたり。
さまざまなことを試したところ、たくさんの課題が浮き彫りに。ロッカーでの受け取りもニーズがあることがうかがえたが、物理的にロッカーの数だけしか売ることができない。回転率を上げることが求められたが、その解決策を見出すことができなかった。
繰り返しになるが、このビジネスのキモは「営業時間外でも販売できる」こと。これだけではなく、もう1つある。「できるだけ買いやすくする」ことだ。例えば、同社は何度もアプリを使って購入してもらうことを試みたが、実はそれほどうまくいっていない。アプリを使えばユーザー情報を取得でき、セキュリティ面での安心感もある。ただ、駅ナカという不特定多数の人が利用するシーンでは相性がよくないのか、「アプリを導入すると、利用者が大幅に減少しました」(山田さん)と振り返る。
アプリを捨てて、無人でパンを販売したところ、一定の結果を出すことができた。で、次はどんなことを考えているのだろうか。現在のケースには扉がない。衛生面や安全性などを考えれば、そこで販売できる商品は限定される。ということで、次は扉付きのモノを設置する予定にしていて、そこで寿司や洋菓子などを販売する。
交通系電子マネーやクレジットカードなどをリーダーにかざして、そのカードが有効であれば扉が開く。あとはケースから商品を取り出すだけで、決済が終了している形だ。「できるだけ買いやすくする」仕組みを考えて、この形にしたわけだが、消費者にどこまで支持されるのだろうか。
お店の人は手間がかからず、売り上げが伸びる。お客は帰りが遅くなっても食事を購入できる。廃棄ロスも削減することができる。無人販売の循環が広がれば、“三方よし”の世界が生まれるのかもしれない。
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