「両利きのリスキリング」、総務が目指すべき2つの方向とは:「総務」から会社を変える(3/3 ページ)
耳にすることも増えた「リスキリング」。キャリアアップのため、転職のため、そして終生働き続けるために求められる、このリスキリングだが、こと総務においてはどのように考えるべきなのだろうか。
ありたき姿の発見と実現。そのために必要なのが、一種畑違いでもあり「新たなスキル」であるテクノロジー活用だ。ただ、総務ではAIやプログラミングの知識やスキル、こういったことまでは必要ないと考える。ざっくりとそのテクノロジーがどのようなものなのか、最新のツールにはどのようなものがあるのか、そのような知識、情報を豊かにしていき、いざ、課題を発見した際に、手持ちのテクノロジー情報を活用して、どれであれば解決できるか、そのように結び付けていくことが求められるのである。
先に記した、戦略総務として発見すべき課題である、理想と現実のギャップ。このギャップも、多くはテクノロジーを活用することで発見・解決できることが多いが、総務では、テクノロジーのみならず、BPOなどの活用で解決することも多いかもしれない。となると、総務の身につけるべきスキルは、課題とソリューションを結び付ける力である。あるいはソリューションの「目利き力」といってもいいかもしれない。
課題とソリューションとをつなげる力がないと、課題が見えても、解決しようがない。特に、今まで経験したことのない課題では、手の出しようがない。理想を掲げ、現実を可視化し、その間の課題を見つけ、解決手段と結び付けていく――この一連のスキルを身につけることにより、総務が会社を変えていく。この役割は、企業が存在する限り、誰かが担う必要があり、現在の企業体形が存続する限りは、存在し続ける重要な仕事となるのではないだろうか。
このように、こと総務においてのリスキリングは、現在の延長線でのスキルを深化しつつ、新たなテクノロジーという、若干異なる畑の知識を接続しながら、既存スキルの深化をさらに進めていく、そんなスタイルに落ち着きそうだと考えている。
著者プロフィール・豊田健一(とよだけんいち)
株式会社月刊総務 代表取締役社長、戦略総務研究所 所長
早稲田大学政治経済学部卒業。株式会社リクルート、株式会社魚力で総務課長などを経験。現在、日本で唯一の管理部門向け専門誌『月刊総務』を発行している株式会社月刊総務の代表取締役社長、戦略総務研究所 所長。一般社団法人ファシリティ・オフィスサービス・コンソーシアムの副代表理事や、All Aboutの「総務人事、社内コミュニケーション・ガイド」も務める。
著書に、『リモートワークありきの世界で経営の軸を作る 戦略総務 実践ハンドブック』(日本能率協会マネジメントセンター、以下同)、『マンガでやさしくわかる総務の仕事』、『経営を強くする戦略総務』
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