2021年乗って良かったクルマ:池田直渡「週刊モータージャーナル」(6/8 ページ)
年末恒例の乗って良かったクルマだが、2021年の新型車のデビューは、マツダは1台もなし、スバルはBRZがあるけれども、来年のエントリーにしたい。もちろんGR86も同じ。スバルWRX S4は公道で乗っていない。結局は、トヨタのMIRAIとランドクルーザー、アクアとカローラクロスというトヨタ大会になってしまった。どれも数日以上借り出して、1000キロくらいは走ってきた。
トヨタ・ランドクルーザー
ランドクルーザーはトヨタの良心である。今でこそTNGA改革の成果を得て、良いクルマが増えたトヨタ車だが、2010年頃はコストダウンのし過ぎで酷いものだった。そういう時代であってもひとりランドクルーザーだけは、道を誤らなかった。
信頼のブランドであるそのランドクルーザーが、ようやくTNGA世代になった(記事参照)。ラダーフレーム初のTNGA導入車両で、今後北米で販売されるタンドラやタコマ、セコイア、4ランナーといったライトトラックもモデルチェンジ後はこのプラットフォームで作られるはずだ。
ランドクルーザーの新旧モデルに乗ってみて一番違うのは、高速道路での快適性だ。その本領を発揮するのはあくまでも沙漠やガレ場であり、そこでの性能を確保した上で、日常域での使い勝手を向上させようと思えば、当然高速移動の快適性が求められる。その性能が大きく進歩した。
ただし、昨今の乗用モデルの快適性と比べるのはまだ少々難しく、誰にでもお勧めできるクルマとまではいえないのが現実だ。しかしながら、あり得ないハードな環境、例えば水深70センチの渡河だとか、岩山を上るとか、滑りやすい泥濘路(でいねいろ)の30度の下り坂を下りるという曲芸運転を、電制システムを駆使して、そこらの素人でも問題なくこなせるようにしているところは驚異的といわざるを得ない。そういう過剰な性能を「持つ歓び」につなげられるか否かが、このクルマを選ぶかどうかの分かれ道になるだろう。
世界のランクルを持つということは多分そういうことなのだと思う。
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