首都圏の鉄道で“似たような車両”が増えている「なるほど」な事情:共通化がもたらす意味とは(4/4 ページ)
「首都圏では似たような感じの車両が増えている」と思ったことはないだろうか。JR東日本を中心として東急などの多くの車両は、共通のプラットフォームで作られている。その理由は……。
乗客第一サービスの提供へ
鉄道各事業者ではさまざまなビジネスを行っている。特に私鉄ではそうだ。しかし、ビジネスの中核となるのは、鉄道事業である。鉄道に人が乗り、移動してもらう。そこに価値と快適さを見出してもらえるかが、鉄道事業の重要なポイントになっていく。
その点からすると、安全性については各事業者共通で確かなものとするプラットフォームが必要であり、独自開発は意味がないということになる。車両の構造なども、いまでさえ確かさがあってそこにコストをかける、というのも意味がない。ここは車両メーカーが共通のものを提供するのが妥当だ。
現在の鉄道車両において快適さで他事業者と差をつけられるのは、内装の質感である。その質感が乗客の満足度を高めていく。どんな内装にするかということを考え、そこでよりよいサービスを提供できるかが、各事業者が考えなければならないことだ。
ロングシートでも、どうすれば座りやすくなるのか。路線によってはセミクロスにするか、ロング・クロス転換座席にするか。21年5月にデビューした京急電鉄の1000形最新車両は、「sustina」をベースにしていても、京急らしい「赤」の色つやは大事にし、車内はロング・クロス転換座席を導入している。
こういったことができるのも、鉄道ビジネスにもっとも重要なことにフォーカスが当てられるようにした、共通のプラットフォームがあるからである。
電車のある部分を共通化することで、かえって差異を際立たせ、それが各鉄道の提供するサービスの違いとなっていくのである。
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