東芝の会社分割は、本当に企業再生につながるのか:戦略的な狙いは(2/3 ページ)
先ごろ注目された東芝の会社分割は、欧米の例とは違って、企業側の狙いは随分と視座の低いものだったようだ。しかしながら結果オーライになる可能性も少なくない。
ではなぜ東芝はこのタイミングで会社分割を決断したのだろうか。そこにどんな戦略的な狙いがあったのだろうか。
残念ながら、この分割を推進した会社側の最も有力な動機は「モノ言う株主」からの圧力に負けての後ろ向きな決断であり、要求した株主側の直接的な狙いはコングロマリット・ディスカウント(※)の解消だろうと推察できる。
※コングロマリット・ディスカウントとは、多くの事業を抱える複合企業(コングロマリット)の企業価値が、各事業の企業価値の合計よりも小さい状態のこと。投資家側にとって事業の全体像や相乗効果が見えにくく、複合企業の価値を精緻に評価するのが難しいことがその主要因とされる。
実際、会社分割発表時の東芝資料には企業戦略的な説明はほとんどなく、単にどう分割するのか、どう株式を配分するのかという財務技術的な側面の説明に終始していたため、「あまりに露骨なコングロマリット・ディスカウント対策だ」として話題(失笑の対象?)になったくらいだ。
東芝といえば、今年の4月に前CEOの車谷暢昭氏が古巣の英投資ファンドであるCVCキャピタル・パートナーズと組んで仕掛けた買収・非上場化策が「自己保身のため」と批判され、遂には辞任に追い込まれた騒動が記憶に新しい。その方策も、あまりにうるさい「モノ言う株主」の圧力から車谷氏が解放されたいがための奇策だったと推察されている。
車谷氏から再び経営のバトンを渡された格好の綱川智前会長・現社長を代表とする今の経営陣もまたこの半年、「モノ言う株主」の圧力に再びさらされてきたことは間違いないだろう。「どうやって企業価値を上げるのか、具体策を示せ。さもないと次の株主総会であなた方の再任はないぞ」と。
その際、会社(経営者)側が今回の分割案を発案したとは考えにくい。こうした金融財務に偏った方策を考え付くのは、いかにも「モノ言う株主」である投資ファンド会社の人たちの発想である。
つまり今回の会社分割策は、何とか投資回収策を模索していた「モノ言う株主」=投資ファンド会社が、東芝という素材を自分たち好みに調理して株主利益を最大化しようという思惑に溢れているものだ。言い換えれば、東芝という会社をよくしたいという発想ではなく、とにかくコングロマリット・ディスカウントを解消することで即効的な株式総額の増加という成果を得られると踏んだ、短期的視野から出た方策だと言わざるを得ない。
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