コラム
東芝の会社分割は、本当に企業再生につながるのか:戦略的な狙いは(3/3 ページ)
先ごろ注目された東芝の会社分割は、欧米の例とは違って、企業側の狙いは随分と視座の低いものだったようだ。しかしながら結果オーライになる可能性も少なくない。
しかし、だからといってこの分割が事業体としての東芝にとってまったくメリットがないかといえば、そんなことはない。事業会社のフォーカスが絞られることで業績改善に向かう可能性は確実に高まる、と小生は考える。
はっきり言って、東芝の経営陣にとって東芝という企業はあまりに事業内容が多様で複雑過ぎたため、その図体を持て余していたと言える。それが故に特にこの5年前後の間、東芝の経営は大いに迷走してきた。
それが会社分割されることで、2つの事業会社の各経営陣はそれぞれ、少なくとももう一方の事業体のほうの経営イシューからは解放される。また存続会社の一種の清算処理(キオクシアの株式などを管理しながら高値で売却する)という気苦労が多い仕事からも解放される。その分、自分たちが担当する事業に注意力を集中することができるようになる。
そうすれば顧客の事情や悩みもより深く知ることができ、より多く時間を使えるので解決のための知恵も湧くだろうし、事業配下の従業員の中の優秀な人材の発掘・抜擢もより適切・迅速にできるだろう。これこそがフォーカスの利点である。
結果的に各事業会社の業績は伸びる可能性は十分高く、トータルの株価総額もかなり改善するかもしれない。10年もすると今回の関係者からは「だから言ったでしょ」という自画自賛の声も聞かれるかもしれない。東芝社員のためにはそうなることを期待したい。(日沖 博道)
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