そんなに学歴フィルターは「悪」なのか マイナビ「大東亜」騒動で見落としがちな視点:「学歴不問」は「実力不問」ではない(1/5 ページ)
マイナビの失態で話題になった「学歴フィルター」。なんだかんだいって存在する「必要悪」ともいえる存在だが、筆者は今回の騒動で見落とされている視点があると指摘する。
12月初旬、インターネット上で突如「学歴フィルター」が話題になった。
発端は、12月6日にSNSへ投稿された、就職活動中の大学生による情報からだ。投稿には、就職支援サービス「マイナビ」の運営事務局からユーザーの学生に送信されたインターンシップ募集メールの画像があり、メールの件名には「大東亜以下」と記載されていたのだ。SNS上では同様のメールを受信した複数のユーザーも名乗り出ており、「学歴フィルターで振り分けられているのでは」「内部情報漏えい事故では」と物議を醸すこととなった。
この騒動に関して、マイナビ運営事務局は翌7日、当該メールは確かに自社からのものであり、誤送信であったと釈明。その上で「不要な誤解を与えた」として謝罪し、再発防止に取り組むと発表した。
「学歴フィルター」とはご存じの通り、一定水準の偏差値未満の大学出身者を採用選考から除外する意図で行われる非公式な選考手段だ。今般のメールにあった「大東亜以下」とはすなわち、「大東亜帝国」(大東文化大学、東海大学、亜細亜大学、帝京大学、国士舘大学または國學院大學※)と称される大学群と、それらより偏差値レベルで下回る大学に所属する学生母集団を指すものと考えられる。
※本記事における大東亜帝国の定義は『デジタル大辞泉』に準拠するが、近年は國學院大學を含むことに関して異論も出ている
なおマイナビ側はメディア取材に対して、大学群ごとに担当するキャリアアドバイザーの組織を分けており、「『大東亜以下』というグループ分けが実際に行われていた」ところまでは認めている。しかし、それらの区分はあくまで企業と就活生間のマッチング促進を目的とした便宜上のものであり、「学歴によって一部の学生が有利になるようなことは行っていない」と回答し、学歴フィルターの存在は否定した。また当該インターンシップを募集していたクライアントに当たる東急ストア側も、「マイナビ側に学歴フィルターなど学生をフィルタリングするような依頼をした事実はない」とコメントしている。
本件にまつわる騒動は、本来であれば「所属大学の偏差値レベルによる区別というセンシティブな情報を、メールの誤送信によってうっかり公開してしまったマイナビ側の情報管理体制」こそが問題視されるはずだったのだが、ちまたではすっかり「学歴フィルターの是非」にまつわる議論のほうが盛り上がっていたようだ。それも、「学歴フィルターなどけしからん」といった意見より、「学歴フィルターの存在は必要悪。それより、表向きには『そんなもの存在しない』とシラを切り通そうとする企業側の欺瞞(ぎまん)が腹立たしい」というニュアンスの批判が多いように感じられた。筆者も同じ考えだ。
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