デジタル庁創設で何が変わったか? 「仲良くないけど期待しかない」府省庁の胸の内:長谷川秀樹の「IT酒場放浪記」 “政府とIT”編(4/4 ページ)
元メルカリCIO長谷川秀樹氏が、IT改革者と語る「IT酒場放浪記」。今回のゲストは、農林水産省のITテクニカルアドバイザーを務める坂本俊輔氏。他の府省庁のIT人材にとって、デジタル庁はどんな存在なのか? 期待や課題、おカネの話まで──「政府とIT」の実情を聞いた。
優秀なIT人材に対して報酬が安すぎる
長谷川: 一方で、優秀なIT人材に対して報酬が安すぎるという問題もありますよね。
坂本: 単純に報酬だけ見たら、府省庁はとても民間の優秀な人材を雇えるレベルではありません。政府CIO補佐官時代はまだ募集要項に「日給4〜6万円」と書かれていました。国からしたら決して安くはないということでしょうが、本当に優秀な人からすると、「そんなもんか」と。
さらに、デジタル庁の募集要項では報酬が一切公開されていませんでした。自分の待遇がどうなるか全く分からない中で、あれだけの素晴らしい人材も集まったのはある意味すごいです。
長谷川: 国は変に平等主義で、超優秀な人やそうでもない人、この報酬ならやってもいいやという人などが、同じ条件、同じ立場で働くんですよね。今後もそれで優秀な人材が集まると思いますか?
坂本: デジタル庁は兼業・在宅OKですが、週3日以上の勤務が原則です。国の仕事をした分だけトータルの収入が減るという働き方をしている人にとっては苦しい。
私にとって国の仕事はライフワークの一つです。非常に大きなやりがいを感じています。ただし、国に時間かけ過ぎてトータルの収入が減るのは耐え難い。必然的に国で働く時間を制限せざるを得ません。私は経営者でもあるので、そちらでちゃんと稼いで、「国はこの報酬でもいいや」と割り切っています。
長谷川: 国(発注側)の給料は安くて、受託するコンサルやSIerの方が給料が高いのが実情です。国が自分たちより多くもらっている人に発注するって構造は、ちょっと変だと思うんですよね。
坂本: 発注側の給料が上がっていかないと、本当の意味で良いIT投資はできません。発注側の人材を強化し、コンサルへの発注を減らせれば、本当に税金が減らせますので。もっとも、これは民間企業でも同じことが言えると思います。
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