美大はどんな「人材」を送り出しているのか 「普通の会社」で働くために:履歴書指導の意味(1/4 ページ)
文系とも理系とも違うナゾの暗黒大陸、美大とそこで学ぶ学生の人材バリュー。決して美術やデザインだけに限らないことを知っていただきたいと前稿を書いたところ、予想外にアクセスをいただきました。調子に乗って第2弾、美大はどんな人材を送り出しているかを書きたいと思います。
著者プロフィール:増沢隆太(ますざわ・りゅうた):
株式会社RMロンドンパートナーズ代表取締役。キャリアとコミュニケーションの専門家として、芸能人や政治家の謝罪会見などをコミュニケーションや危機管理の視点で、テレビ、ラジオ、新聞等において解説している。大学や企業でのキャリア開発やコミュニケーション講座を全国で展開中。著書「謝罪の作法」他多数。
私がキャリア教育で重視しているのは「お金の儲(もう)け方」です。夢を実現する方法はキャリア教育ではなく、まず一人で生活できる社会的自立がキャリア教育の最大の目的だと考えるからです。芸術だけでなく理系大学院の基礎研究、文学・人文学など、お金儲けと直結しなそうに見える学問であっても、学問は金儲けのためにあるのではありません。大学や院で身に付けるのは単なる知識ではなく能力とスキルなのです。
美大生へのキャリア指導と言えば、それはポートフォリオ指導を指すことが多いといえます。金融資産運用メニューや外資系マネージャーが持ってる書類ばさみでもなく、「作品集」と理解していただくのが良いかと思います。
習作がどんどん変化し、向上し、その表現力や視点が磨かれる過程が、作品を時系列で綴ったポートフォリオには詰まっています。ゆえに美大のキャリア指導=ポートフォリオ指導と呼べるほど定着したものです。私もクリエイターとしての能力を見る上で、最も大切なものであることに一切異論はありません。
ただし!
ポートフォリオだけがキャリア指導かといえば、それは違います。つまりクリエイターとしての能力評価には有効でも、先稿で述べたように、美大生のキャリア・就職先進路はクリエイティブワークだけに限らないからです。秋田美大は私のような美術の素人にキャリア科目を任せてくれただけでなく、何と美術学部3年生全員に履歴書演習を課す指導をさせてくれました。これは美大として画期的な教育だと確信しています。
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