ブッダに学ぶ生き方改革! 「45歳定年」がささやかれる現代社会で必要とされる人材になるには:大愚和尚のビジネス説法(3/3 ページ)
2021年9月に開かれた経済同友会のオンラインセミナーにて、サントリーホールディングスの新浪剛史社長が提言した「45歳定年制」が大きな波紋を呼びました。多くの賛否両論がありましたが、私自身は、新浪社長の提言自体、社会に対する一つの重要な問題提起だったと感じています――大愚和尚に聞く、定年までの“生き方改革”とは?
仏教には、自分を最大限に生かしながら、組織と調和するための秘訣があります。四摂法(ししょうぼう)と呼ばれる4つの教えです。
- 布施(ふせ):与えること
自分から与えようとせず、会社からもらうことばかりを考える人は、能力も伸びませんし、嫌われてしまいます。知識、経験、能力、時間、笑顔、情熱……相手が求めていることを自分から与える人になりましょう。
- 愛語(あいご):優しい言葉、慈愛に満ちた言葉を話すこと
どんなに優秀でも、口を開けば、怒り、愚痴、不満、棘のある言葉ばかり発する人は嫌われてしまいます。相手に対する敬意や思いやりの無い言葉は、人を遠ざけてしまいます。慈愛に満ちた言葉を話しましょう。
- 利行(りぎょう):相手の利益になることを考え、実践すること
これを聞いて「そんなことを考え、実行したら、自分が損する」と感じた人は、利行を実践したことがない人です。利行は真理です。会社の利益を常に考え、顧客の利益を常に想像しながら仕事をする人は、必ず会社から必要とされます。
- 同時(どうじ):相手の立場に立って、共に仕事に取り組むこと
「相手の立場に立つ」と言うのは簡単ですが、実践するのは簡単ではありません。なぜなら、私たちは自分の経験を通して、他の気持ちを理解するからです。同時を体得したければ、日頃から社内外のいろいろなことに興味を持って、積極的に体験を積むことです。
いかがでしたでしょうか。一見、どれも聞いたことがある、知っているような内容だったかもしれません。しかし、「仏教の真理は、6歳の子どもでも理解できるが、80歳の老人でもこれを行うことは難しい」と言われています。そして、真理とは、「時代が変わっても、場所が変わっても、変わらない原則のこと」です。
三法印と四摂法。この真理を一つでも理解し実践したならば、きっと、「70歳定年義務化だから仕方なく」ではなく、「70歳定年まで、どうか居て欲しい」と言われる人財になれることでしょう。
著者:大愚元勝(たいぐ げんしょう)
佛心宗大叢山福厳寺住職。株式会社慈光マネジメント代表取締役。慈光グループ会長。僧名「大愚」は、大バカ者=何にもとらわれない自由な境地に達した者の意。駒澤大学、曹洞宗大本山総持寺を経て、愛知学院大学大学院にて文学修士を取得。 僧侶、事業家、作家・講演家、セラピスト、空手家と5つの顔を持ち、「僧にあらず俗にあらず」を体現する異色の僧侶。
HPにて「お悩み相談」を受け付けているほか、YouTubeチャンネル「大愚和尚の一問一答」で国内外から寄せられた相談にも対応する。著書『苦しみの手放し方』(ダイヤモンド社)、『最後にあなたを救う禅語』(扶桑社)、『人生が確実に変わる 大愚和尚の答え』(飛鳥新社)など。
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